佐伯郡

佐伯郡：広島の歴史を刻んだ郡の興亡

佐伯郡は、かつて広島県に存在した郡です。その歴史は古く、古代の安芸国にまで遡ります。現在の広島市の佐伯区、西区の一部、廿日市市、大竹市、そして江田島市の一部を含む広大な地域が、かつては佐伯郡に属していました。

広大な古代の郡域

古代の佐伯郡は、現在の佐伯郡よりもさらに広い範囲を有していました。現在の広島市安佐南区の大部分と安佐北区の一部もその中に含まれていたとされています。平安時代末期には、佐伯郡は佐東郡（後の沼田郡）と佐西郡に分割されましたが、江戸時代の寛文4年（1664年）、佐西郡が再び佐伯郡と改称されました。郡名の由来は、厳島神社の神主家の名前にちなむと言われています。

近世から明治時代

明治維新の頃、佐伯郡全域は安芸広島藩領でした。明治初年時点では、86の村が存在していました。これらの村々は、その後、幾度にもわたる合併や改編を経て、その姿を変化させていきます。

明治11年（1878年）、郡区町村編制法の施行により、行政区画としての佐伯郡が正式に発足しました。郡役所は廿日市町に設置されました。その後、明治15年と16年には、複数の村が合併し、村の数は減少していきました。

明治22年（1889年）、町村制が施行されると、2町39村が誕生しました。この時、佐伯郡の行政区域は、現在の広島市、廿日市市、大竹市、江田島市の一部にまたがる広大なものでした。

20世紀の合併と市制施行

明治32年（1899年）には郡制が施行され、その後も、町制施行や町村合併が繰り返されました。例えば、明治42年には草津村が町制施行で草津町となり、明治44年には大竹村が大竹町となりました。また、同年の10月1日には五海市村が五日市町、己斐村が己斐町にそれぞれ町制施行されました。

大正時代には、郡会が廃止され、昭和時代に入ると、己斐町、草津町、古田村が広島市に編入されました。また、この時代には多くの町村合併が行われ、佐伯郡の行政区域は徐々に変化していきました。戦後も合併は続き、昭和29年（1954年）には、玖波町、小方町、大竹町、栗谷村、友和村の一部が合併して大竹市が発足し、郡から離脱しました。

昭和30年（1955年）から昭和31年（1956年）にかけても大規模な合併が行われ、多くの町や村が新たに誕生、または合併しました。昭和60年（1985年）には五日市町が広島市に編入され、佐伯区が誕生しました。

平成時代の消滅

平成時代に入っても、市町村合併は続き、平成15年（2003年）には佐伯町と吉和村が廿日市市に編入されました。平成16年（2004年）には、能美町、沖美町、大柿町が江田島市と合併し、平成17年（2005年）には、湯来町が広島市に編入、大野町と宮島町が廿日市市に編入され、これにより佐伯郡は消滅しました。

まとめ

佐伯郡の歴史は、古代から現代まで続く広島県の歴史と深く関わっています。その変遷は、時代の流れとともに変化する行政区域のあり方を示す貴重な事例となっています。長きにわたる歴史の中で、多くの合併や市制施行を経て、佐伯郡は消滅しましたが、その歴史は、現在も広島の地域社会に大きな影響を与え続けています。

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