佐多久慶

佐多久慶（さた ひさよし）は、安土桃山時代から江戸時代初期にかけての武将であり、島津氏に仕えた家臣です。佐多氏の11代当主としても知られています。彼の生涯は、戦国時代の動乱と、その後の江戸時代への移行期を色濃く反映しています。

久慶の一族は、天正17年（1589年）頃、門之浦（現在の鹿児島県南九州市知覧町）に居住していました。当時、一族の者である佐多久福の家来たちが、久福の名を掲げて海賊行為に及んでいたことが発覚します。この行為は、時の天下人であった豊臣秀吉の怒りを買い、久福だけでなく、一族の長であった久慶にも嫌疑がかけられる事態となりました。

身に覚えのない久慶は、潔白を証明するため、自らが海賊行為とは無関係であることを誓紙に書き記しました。さらに、自身の知行目録を担保として金銭を工面し、三奉行に付け届けを行うことで、上洛して直接弁明する機会を得ようとしました。この一連の行動は、当時の武士社会における政治的な駆け引きの一端を示しています。久慶の弁明は、主君である島津義久の尽力もあって、一応のところは認められ、この件は事なきを得ました。この一件は、当時の武将たちが、大名間の勢力争いだけでなく、時の権力者との関係においても、常に危機に晒されていたことを物語っています。

天正19年（1591年）、久慶は所領を知覧から川辺（現在の鹿児島県南九州市川辺町）へと移されました。同年には、肥前名護屋城の普請役を務めています。文禄元年（1592年）には、島津義弘に従い朝鮮へ渡海しましたが、病に倒れてしまいます。戦地で病に伏した久慶は、弟である久作と久英を軍代として残し、自身は帰国しました。慶長9年（1604年）、久慶は生涯を終えました。彼の短い生涯は、戦国時代から江戸時代への転換期における武士の姿を映し出しています。

参考文献
* 『本藩人物誌』 鹿児島県史料集（13）（鹿児島県史料刊行委員会）

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