佐多氏

佐多氏について

佐多氏（さたし）は、日本の氏族の一つであり、主に大隅国（現在の鹿児島県東部）を発祥とする二つの系統が存在します。一つは建部姓を称する佐多氏、もう一つは島津氏の流れを汲む佐多氏です。

建部姓の佐多氏

建部姓の佐多氏は、大隅国の豪族として勃興しました。その祖は、大隅国に土着した建部高清とされています。史料には、高清が「佐太十町」の地を領有し、「佐多新大夫」と称していたことが記録されています。また、建久9年（1198年）の御家人交名にもその名が見られます。

その後、建部姓佐多氏は平姓を称するようになり、「平資盛の子・国盛の男時盛に至り、建部氏を称し、また佐多ともいう」と伝えられています。この時盛の子孫には、承久の乱で上洛し、宇治川で戦死した佐多太郎久秀がいます。

『地理纂考』には、佐多郷馬籠村高木城に関する記述があり、そこには「鎌倉将軍頼朝の時、佐多新大夫高清が領主であり、その後、野上田伊予坊時盛（または佐多太郎友盛）が佐多を領した」と記されています。時盛は平資盛の孫であり、建部氏を称したとされています。その後、佐多太郎久秀が承久の乱で戦死し、佐多家は一時的に途絶えたとされています。田代氏系図にも、時盛の子である存盛が佐多を領し、その孫の久秀が宇治川で戦死したと記されています。

島津氏流の佐多氏

島津氏流の佐多氏は、鎌倉時代の文保2年（1318年）に、島津宗家4代当主・忠宗の三男である忠光が、大隅国の佐多を与えられたことに始まります。忠光は佐多氏を称し、その後、薩摩国知覧（現在の鹿児島県南九州市知覧町）も与えられました。

忠光は当初伊敷（現在の鹿児島県鹿児島市伊敷）に居住していましたが、孫の氏義の代に佐多へ居城を移し、さらにその子である親久の頃に知覧城へと移りました。ただし、親久の子である忠遊は、自ら一代を限りに佐多に居住しています。

江戸時代に入ると、島津氏流佐多氏は薩摩藩の一所持の家格となり、重きをなしました。16代当主である島津久逵は、2代藩主島津光久の子であり、4代藩主島津吉貴から島津姓を名乗ることを許され、知覧家として代々続きました。しかし、次男家は佐多姓を名乗り続けました。庶流には達山氏や伊佐敷氏などが存在します。また、諱は嫡男が「久」の字、次男以降が「直」の字を用いる慣習がありました。さらに、正徳年間以降は、士分以下の者や他家の奉公人が佐多氏を称することが禁じられました。

佐多氏の歴代当主

島津氏流佐多氏の歴代当主

佐多忠光（島津忠宗の三男）
佐多忠直
佐多氏義
佐多親久
佐多忠遊
佐多忠山
佐多忠和
佐多忠成
佐多忠将
佐多久政
佐多久慶
佐多忠充
佐多忠治
佐多久孝
佐多久利
島津久逵（2代藩主島津光久の子）
島津久豪
島津久峰（5代藩主島津継豊の子、久豪直子扱い）
島津久邦
島津久典
島津久福
島津久徴
島津剛二郎
島津忠弘


このように、佐多氏は、建部姓と島津氏流の二つの系統を持ち、それぞれが異なる歴史を歩んできました。建部姓佐多氏は中世の武士として、島津氏流佐多氏は近世の大名家として、それぞれの時代において重要な役割を果たしました。

参考資料

稲葉行雄『「さつま」歴史人名集』高城書房出版、1991年6月。
太田亮「国立国会図書館デジタルコレクション 佐多　サタ」『姓氏家系大辞典』 第2、上田萬年、三上参次監修、姓氏家系大辞典刊行会、1934年。
鹿児島県史料刊行委員会 編『本藩人物誌』鹿児島県立図書館〈鹿児島県史料集 13〉、1973年3月。
知覧村教育會 編『知覧郷土史』1926年。

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