佐渡奉行

佐渡奉行：佐渡島を治めた幕府の役職

佐渡奉行は、江戸幕府が設置した遠国奉行の一つで、佐渡島の統治を担った重要な役職でした。関ヶ原の戦後、佐渡島が上杉氏から幕府の支配下に入った慶長6年（1601年）に、当初は佐渡代官として設置されました。正式に「佐渡奉行」と称されるようになったのは、元和4年（1618年）の鎮目惟明と竹村嘉理の着任以降と考えられています。

佐渡奉行の主な職務は、佐渡島全域の行政と司法、そして佐渡金山をはじめとする金銀山の経営管理でした。さらに、島の海上警備や年貢の徴収も重要な任務でした。江戸時代後期には、外国船の監視も加わるようになりました。

奉行の地位は老中支配下の布衣役で、役高は1000石、役料1500俵、100人扶持が支給されていました。江戸城での殿中席は芙蓉の間と定められていました。慶応3年（1867年）には、禄高に関わらず3000両の役金が支給されるようになりました。

佐渡奉行の組織は、奉行を頂点に、組頭2名、広間役7～8名、定役、並役、使役、同心（70名）、牢守、水主、与力（30騎）など、約300名から構成されていました。

奉行所は、当初は鶴子に置かれていましたが、大久保長安の時代に相川（現在の新潟県佐渡市相川広間町）に移転し、佐渡奉行所（相川陣屋）となりました。これは現在、国の史跡「佐渡金山遺跡」の一部として保存されています。島内には、5カ所（後に4カ所）の代官所が設置され、佐渡奉行は島全体の統治を円滑に進めていました。

正徳2年（1712年）以降は、佐渡奉行の定員が2名となり、1名は佐渡に在勤、もう1名は江戸に詰める体制となりました。佐渡に在勤する奉行は単身赴任でした。

佐渡奉行は慶応4年（1868年）に廃止されました。

歴代佐渡奉行

佐渡奉行には、多くの者が就任しました。初期の佐渡代官には、河村吉久、田中正長などがおり、中には増税政策の失敗により切腹や改易に処された者もいました。大久保長安は、関東代官頭、勘定奉行、老中、銀山総奉行を歴任した人物で、佐渡奉行としても重要な役割を果たしました。

その後、鎮目惟明、竹村嘉理といった人物が佐渡奉行に就任し、佐渡島の開発や統治に貢献しました。中期から後期にかけては、伊丹康勝、荻原重秀、河野通重など、多くの幕府高官が佐渡奉行を経験しています。これらの奉行たちは、それぞれ異なる経歴と能力を持ち、佐渡島の行政、司法、経済に影響を与えました。幕末期の佐渡奉行には、鈴木重嶺がおり、維新後には浜松県参事、相川県参事として活躍しました。

佐渡奉行の役割と影響

佐渡奉行は、佐渡島の政治、経済、社会の全てを掌握する重要な役職でした。特に佐渡金山は、幕府財政に大きな貢献をしたため、佐渡奉行はその経営に深く関与していました。また、佐渡島の防衛や外交にも関わり、外国船の監視なども行っていました。

佐渡奉行の活動は、佐渡島の発展に大きく貢献した一方で、住民への負担も少なくありませんでした。特に金銀山の経営は、厳しい労働条件や環境問題を引き起こした可能性があります。

歴代佐渡奉行の取り組みや政策は、佐渡島の歴史と発展に大きな影響を与えました。彼らの業績は、歴史資料や遺跡を通して、現在も語り継がれています。

参考文献

大石学編『江戸幕府大事典』（吉川弘文館、2009年）
川路聖謨著、川田貞夫校注『島根のすさみ』（東洋文庫、1973年）
佐渡奉行一覧表（新潟県史 近世4、2010年）

関連項目

佐渡金山
* 佐渡奉行街道

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