鎮目惟明

鎮目惟明

鎮目惟明（しずめ これあき）は、安土桃山時代から江戸時代前期にかけての武将・旗本であり、上田七本槍の一人として名を残し、佐渡奉行としてもその才能を発揮しました。

生い立ち

鎮目氏は甲斐国山梨郡鎮目村をルーツとし、甲斐武田氏に仕えた家柄でした。初代七郎右衛門以来、武田氏に仕え、惟明の父である鎮目惟真は武田信玄・勝頼の二代に仕えましたが、武田家滅亡後に浪人となりました。その後、惟明の代になり徳川氏に仕えることとなります。

永禄7年（1564年）に甲斐国で生まれた惟明は、武田氏滅亡後、徳川家康に近侍するようになったと伝えられています。徳川氏の関東移封に伴い甲斐を離れ、文禄元年（1592年）には徳川秀忠に仕える身となりました。

関ヶ原の戦いと上田七本槍

慶長5年（1600年）の関ヶ原の戦いでは、秀忠率いる徳川勢本隊に加わりました。第二次上田合戦において、鎮目惟明は上田城に籠城する真田昌幸率いる真田勢に対し、牧野康成・牧野忠成・朝倉宣正らと共に苅田を行いました。しかし、真田勢の挑発に乗って追撃した徳川勢は、城際までおびき寄せられ大きな損害を被り、鎮目らは秀忠から叱責を受け、上野国吾妻郡に蟄居することとなりました。

しかし、翌年には許され、大番組頭として1,600石を与えられました。大坂の陣では使番として活躍し、首級を一つ挙げるという武功も立てています。

佐渡奉行としての功績

元和4年（1618年）、秀忠による刷新人事の一環として、竹村嘉理（嘉政）と共に佐渡奉行に任じられました。佐渡に渡った惟明は、かつて大久保長安が行った改革によって最盛期を迎えた佐渡金山の経営再建に尽力しました。竹村は江戸にいることが多く、主に港湾や輸送を担当し、惟明の手腕によるところが大きかったと評価されています。

惟明は、諏訪間歩など33の坑道に公費を投入して「御直山」として整備し、金山・銀山の山主が経営する「自分山」からの公納を定率化することで、山主の経営を安定させました。また、米を市価の二割安で全町民に提供したり、貨幣流通の円滑化と銀の島外流出を防ぐために、佐渡でのみ通用する極印銀や小判を鋳造するなど、様々な政策を実施しました。これらの政策により、島の経済は活性化し、生産量も増加しました。

また、輸送の安全性を考慮し、小判での輸送を提案しました。元和7年（1621年）には、後藤庄三郎の進言を受け、配下の後藤庄兵衛、浅香三十郎が小判の鋳造を開始しました。さらに、ピストン式排水ポンプなど新技術を導入し、年間50t以上の銀、400kg近い金を産出するという佐渡金山の全盛期を築き上げました。これらの善政により、近世までその功績を称える「鎮目祭」が行われていました。金山開発だけでなく、新田開発にも尽力した記録も残っています。

晩年

佐渡戸地村の鉱山施設を巡視中に、現在の墓がある場所で急死しました。享年64歳。死因については諸説あり、川狩り（釣り）中に体調を崩したとも、『佐渡国略記』にあるように、相川・吹上ヶ浦で大蛸を釣り上げた際に海に引きずりこまれそうになり、自ら手を切断した傷が原因で亡くなったとも伝えられています。

墓は佐渡市下相川にあり、位牌は佐渡市相川山之神総源寺に安置されています。墓は、弘化2年（1845年）に長男・惟吉の8代後の鎮目惟成、次男・惟忠の8代後の鎮目喜一らによって現在の場所に建立されました。この墓は、昭和33年（1958年）3月5日に新潟県指定史跡となっています。

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