佐竹実定

佐竹 実定（さたけ さねさだ）

室町時代中期に生きた武将。常陸国の守護大名であった佐竹氏第12代当主、佐竹義人の次男として誕生しました。兄に義俊、弟には戸村氏の祖となる義倭などがいます。自身の名である「実定」は、佐竹氏の通字である「義」を用いない珍しいものでしたが、これは父義人の実家にあたる山内上杉氏の当主、上杉憲実の猶子（養子に準じる関係）となったことに由来します。佐竹氏の歴代当主には含まれていませんが、一時期は兄である当主・義俊を追放し、佐竹氏の本拠地である常陸太田城において、事実上の支配者として君臨したこともあります。

生涯

佐竹義人の次男として生まれましたが、上杉氏の猶子となる以前の詳しい事績については分かっていません。

永享の乱によって鎌倉公方が滅亡した後、関東管領であった上杉憲実は、弟の清方に家督を譲り、関東管領職も辞して隠居生活に入りました。憲実には嫡男の憲忠をはじめ複数の息子がいましたが、かつて自らが滅ぼす一端を担った鎌倉公方の遺児たちの心情を考慮したためか、彼らを仏門に入らせ、他家から養子を迎えることで後継者とすることを検討し始めます。そこで候補として白羽の矢が立ったのが、常陸守護・佐竹義人の次男である実定でした。佐竹義人は、憲実の叔父にあたる山内上杉憲定の次男であり、憲実にとっては従兄弟にあたりますが、佐竹氏に婿養子として入り家督を継いだ経緯から、山内上杉家の血筋を強く引いていました。また、義人は先の永享の乱において滅ぼされた鎌倉公方方を支持した人物であったため、その子である実定を後継者とすることで、鎌倉方との融和を図る意図もあったと推測されています。

文安元年（1444年）、実質的に上杉憲実を代行していた上杉清方が亡くなり、山内上杉家および関東管領の地位が不在となると、憲実は猶子とした実定を後継者に指名し、代々伝わる家宝や文書を譲り渡す意向を示しました。しかし、山内上杉家の家宰であった長尾景仲はこれに反対し、憲実らと対立します。その結果、文安4年（1447年）には憲実の嫡男である憲忠が後継者となり、関東管領職にも就いたため、実定が上杉氏を継ぐ話は消滅し、実家の佐竹家へ戻ることになりました。

当時、父の義人は既に嫡男の義俊に佐竹氏の家督を継がせていましたが、実定が帰郷すると、義人は山内上杉氏との関係を改善しようと図り、次第に義俊を疎んじて実定に家督を譲ることを考え始めます。これにより、佐竹氏の一族や家臣団も義俊派と、義人・実定派の二派に分かれ、佐竹氏の内部抗争が再び激化しました。この抗争以前から佐竹宗家との対立を深めていた山入佐竹氏の山入祐義は、情勢の混乱を狙って義人・実定側に味方し、さらに江戸通房・通長らも実定らを支援した結果、享徳元年（1452年）に佐竹氏の当主であった義俊とその子・義治は、本拠地である太田城から追い出されました。

これにより、実定は父義人と江戸通房らを補佐に立て、事実上の佐竹氏当主として政務を執るようになりました。しかし、追放された義俊父子は大山氏の大山城に拠点を置いて抗争を続けたため、その後も佐竹氏内部の混乱は収まりませんでした。長禄3年（1459年）には、補佐役の江戸通房と共に常陸小田氏の小田持家とも戦いましたが、敗れています。

寛正6年（1465年）5月3日には、実定を支えていた補佐役の江戸通房が亡くなり、そのわずか後となる同年9月25日には、実定も世を去りました。実定には子の義定がいましたが、応仁元年（1468年）には父の義人までも亡くなったため後ろ盾を失い、やがて太田城に復帰した義俊父子によって追放されました。義定は水戸城の江戸通長のもとに身を寄せましたが、文明9年（1477年）には、義俊方が差し向けたとされる刺客により水戸城内で殺害されてしまいます。こうして、佐竹実定の血筋は二代で途絶えることとなりました。

佐竹氏の歴史において、実定は当主として太田城に君臨した期間があったものの、歴代の当主としては数えられていません。その生涯は、山内上杉氏の後継問題に巻き込まれ、さらに佐竹氏内部の激しい家督争いを引き起こした、波乱に満ちたものでした。

もう一度検索