佐香神社

佐香神社（さかじんじゃ）

島根県出雲市小境町に鎮座する佐香神社は、古くから酒造の神として知られ、地元の人々からは「松尾神社」の名でも親しまれています。酒造業者からの信仰が篤く、毎年多くの参拝者が訪れます。

祭神

佐香神社の主祭神は、久斯神（くすのかみ）と大山咋命（おおやまくいのみこと）です。久斯神は酒の神であり、少彦名神（すくなひこのかみ）の別名ともされています。大山咋命は、京都の松尾大社から勧請された神です。また、配祀神として、天津彦彦火瓊瓊杵命（あまつひこひこほのににぎのみこと）、木花咲耶比売命（このはなさくやひめのみこと）、百八十神（ももやそがみ）が祀られています。特に、木花咲耶比売命も酒造りに関わりの深い神として知られています。

『出雲国風土記』には、佐香郷において、180柱もの神々が川の中州に集まり、御厨を建てて酒造りを行い、180日もの間宴会を開いたという説話が残されています。配神として祀られている百八十神は、この説話に由来すると考えられています。

歴史

佐香神社の歴史は古く、『出雲国風土記』には、「佐加社」としてその名が記されています。また、『延喜式神名帳』には、出雲国楯縫郡の「佐香神社」として記載されています。江戸時代には、松江藩主をはじめ、近隣の出雲杜氏たちの崇敬を集めていました。

室町時代には、京都の松尾大社から大山咋命が勧請され、「松尾明神」と呼ばれるようになったと伝えられています。享保2年（1717年）に編纂された地誌『雲陽誌』には、小境村の項に「松尾明神」とあり、明応9年（1500年）の棟札が存在していたと記されています。明治時代に入り、社名は「佐香神社」に戻されましたが、現在でも「松尾神社」の通称も併用されています。

祭事

佐香神社の例大祭は、毎年10月13日に行われます。この祭りは「濁酒祭（どぶろくまつり）」とも呼ばれ、室町時代から続く伝統的な祭事です。祭りの準備として、10月1日の未明には、宮司自らが杜氏となり、神酒の醸造を行います。祭礼前日には国税庁の係員による検査が行われ、祭当日には酒造業者たちが集まり、安全を祈願する奉納祭が執り行われます。佐香神社では、祭礼のために毎年1石以下のどぶろくの醸造許可を財務省から得ています。

参考文献

関和彦『『出雲国風土記』註論』 2006年 明石書店 ISBN 4-7503-2376-4
瀧音能之『古代の出雲事典』 2001年 新人物往来社 ISBN 4-404-02941-1
谷川健一編 『日本の神々 神社と聖地 7 山陰』（新装復刊） 2000年 白水社 ISBN 978-4-560-02507-9

関連文献

速水保孝「出雲神話と酒造り」『日本釀造協會雜誌』第82巻第8号、日本釀造協会、1987年、562-566頁、doi:10.6013/jbrewsocjapan1915.82.562。

関連項目

* 松尾神社

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