何承天

承天の生涯と業績

承天（かしょうてん、370年 - 447年）は、東晋から南朝宋にかけて活動した著名な思想家、数学者、天文学者です。彼は東海郡郯県の出身で、学問の家庭に生まれ育ちました。承天が5歳のとき、父を亡くしましたが、母の徐氏は非常に優れた知識人であり、儒学や史学を通じて深い教養を身につけさせました。この家庭環境は、彼の後の学問的成長に大きな影響を与えました。

承天は元嘉16年（439年）、宋の文帝の命を受けて著作佐郎に任命され、歴史書『国史』の編纂に着手しました。しかし、彼の生涯の間にこの大作は完成を見ることはなかったものの、彼の優れた研究は後世に大きな影響を与えました。

元嘉暦の編纂

元嘉20年（443年）、承天は当時使用されていた景初暦の誤差を指摘しました。その結果、彼は新たな暦法、すなわち元嘉暦を編纂し、この暦は元嘉22年（445年）から天監8年（509年）まで広く用いられました。彼はまた、「調日法」という、実数を有理数で近似する方法を発表し、当時の暦法研究の発展に寄与しました。

中でも、円周率の研究は彼の業績として特に顕著で、彼はその値を111035/35329（約3.14288）と算出しました。これにより数学界において重要な一歩を刻み、後の数学者たちに多大な影響を与えました。彼の計算による円周率の近似は、非常に高精度であったことが後の研究により確認されています。

調日法とは

調日法は、実数を有理数で近似する方法で、承天が研究していた暦法の一部として考案されました。この方法では、ある実数に対してその値を挟む2つの分数を使い、その分子と分母の和を求めて新しい分数を導出します。このプロセスを繰り返すことで、より正確に実数に近づく分数を見つけ出すことが可能です。例えば、円周率の近似を求めるために、分数3/1と4/1からスタートすると、次第に精度の高い値を得ることができます。

以下はその一例です:


このように、非常に高精度な円周率の近似が求められ、それは後の数学的計算の基礎ともなりました。

承天の影響

承天は生前に『国史』を完成することなく亡くなりましたが、彼の死後に山謙之や蘇宝生、徐爰らがその編纂を引き継ぎ、最終的には大明8年（464年）に完成しました。また、正史『宋書』はこの『国史』を参考にして編纂されたため、彼の業績は後世に長い影響を与え続けています。

承天の研究と業績は、数学や天文学の発展に大きく寄与しただけでなく、彼の思想はその後の中国の学問にも色濃く影響を及ぼすこととなりました。彼の生涯に捧げられた学問の努力は、今日でも多くの人々に評価され、学術界の重要な一部として記憶されています。

もう一度検索