作人館

作人館（さくじんかん）

作人館は、江戸時代の後半に陸奥国盛岡藩が藩士の子弟教育のために設立した藩校です。現在の岩手県盛岡市中央通一丁目、かつての盛岡城下日影門外小路に位置していました。その歴史は明治維新後の学制改革を経て小学校へと引き継がれ、今日の盛岡市立仁王小学校の源流とされています。

歴史

盛岡藩における教育機関の起源は、1636年（寛永13年）に第2代藩主・南部重直が盛岡城内の新丸に設けた「稽古所」に求められます。この稽古所は後に城外の日影門外へと移転し、さらに時代を下った1840年（天保11年）、第12代藩主・南部利済のもとで「明義堂」と命名されました。その後、1862年（文久2年）に校地の拡張と校舎の全面的な新築が行われ、これを機に「作人館」と改称されました。作人館は、学問を教える「修文所」、武芸を鍛錬する「昭武所」、そして医学を教授する「医学所」の三つの部門で構成されていました。開校以降、盛岡藩の士族の子弟にとって、作人館への通学は義務とされました。

作人館では、学生が藩外での学びを希望する場合、文武や医学の分野に限り、日頃の学業成績と教員の推薦に基づいて判断され、許可された際には江戸、大坂、長崎での遊学にかかる費用が藩から支給される制度がありました。学生数は最大で200人程度であり、藩からの学費支援を受ける藩費生と、自費で通学する学生とがいました。学校の運営資金は、藩から支給される学田（学校運営のための領地）からの収益、約三千石相当で賄われていました。

明治維新を迎え、新たな学制が施行されると、作人館は近代的な教育機関へと再編されます。「第七大学区第十八番中学区第一番小学校」として新たなスタートを切り、その後も教育の場としての役割を担い続け、現在の盛岡市立仁王小学校へとその歴史と精神を受け継いでいます。

跡地と遺産

仁王小学校が別の場所へ移転した後、作人館の跡地には、1924年（大正13年）に移転してきた盛岡市立商業学校が置かれました。現在、この地は聖跡記念公園（日影門緑地）として整備され、市民の憩いの場となっています。この公園の名前にある「聖跡」は、1876年（明治9年）に明治天皇が東北地方を巡幸された際、仁王小学校（当時の名称は確認が必要だが、作人館の後身にあたる）に行幸されたことを記念して名づけられました。

また、作人館がその名を称していた時代に使用されていたと考えられている、校名「作人館」を記した扁額が一面現存しています。この扁額は、その歴史的な価値が認められ、1985年（昭和60年）8月1日に盛岡市の有形文化財に指定されており、現在も盛岡市立仁王小学校に大切に所蔵されています。

著名な関係者

作人館からは、教育者、政治家、学者など、様々な分野で活躍した多くの人材が輩出されました。また、優れた教員陣も作人館の教育水準を支えました。

教員

小田為綱
那珂通高（句読師）
那珂通世（句読師）
杉村濬（剣術）

出身者

阿部浩
菊池武夫
原敬
田中舘愛橘
佐藤昌介
新渡戸仙岳

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