作家の手帖 (松本清張)

概要

『作家の手帖』は、1970年代から1980年代の日本を代表する作家、松本清張のエッセイを中心に構成された作品です。この書籍は、1981年3月25日に文藝春秋から発行されました。著者の松本清張は、ミステリー小説をはじめとする多くの作品で知られ、文学界に大きな影響を与えてきました。この本を編集した藤井康栄は、松本が特にこの作品に満足していたと回顧しています。このエッセイ集は、清張の創作プロセスや思考を深く理解するための貴重な手引きとなっています。

内容詳細

『作家の手帖』は、以下のような内容から構成されています。まずは、創作ヒントやノートが収録されており、『黒い手帖』に掲載された「創作ノート(一)」および「創作ノート(二)」の続編です。これにより、彼がどのようにインスピレーションを得ていたのかが詳述されています。

次に、折々のおぼえがきとして、森鷗外に関する随筆が紹介されています。このエッセイを通じて、清張の文学愛やその影響を与えた人物たちについての考察がなされています。

福山敏男からの書簡も特筆すべき内容です。この手紙は、清張が『火の路』を執筆していた際に求めた教示に対する丁寧な回答が収められています。この文書は、清張にとって非常に大切なものであり、彼の創作エネルギーの一端を垣間見ることができます。

さらに、読書カードも掲載されています。これは日本史および東洋史に関する読書メモであり、清張の知的関心の広がりを示しています。彼がどのように日々学びを深め、作品制作に役立てていたのかが分かります。

この作品のなかには、1964年に行ったヨーロッパ旅行についての記録も含まれています。『はじめてのヨーロッパ』というタイトルのもと、彼の旅行体験や感想が描かれており、異国を巡る冒険心が伝わってきます。おそらく、この体験が彼の作品にどのような影響をもたらしたのかを考察することも興味深いでしょう。

また、取材紀行としてオランダ・ベルギー・イギリスについての記録もあり、『アムステルダム運河殺人事件』や『セント・アンドリュースの事件』に関連した取材内容が記されています。これらの作品の背景にある実際の体験や取材の様子を知ることができ、読者には作品をさらに楽しむためのヒントを与えてくれます。

最後に、「創共協定」と題された経過メモも収録されています。こちらは日本共産党と創価学会との合意についての証言メモであり、清張がこの事件の仲介者としてどのように関与したのかが示されています。

本書は、松本清張の創作活動の舞台裏や思索を知るための貴重な資料であり、彼の作品をより深く理解するための手助けとなること間違いありません。

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