作江伊之助

作江伊之助

作江伊之助（さくえ いのすけ、1910年10月17日 - 1932年2月22日）は、大日本帝国陸軍の軍人であり、爆弾三勇士の一人として知られています。最終階級は工兵伍長。長崎県平戸市出身。

来歴

作江伊之助は、父・音次郎のもとに生まれ、兄が大工として家計を支える家庭で育ちました。運送業に従事していましたが、徴兵により久留米独立工兵第十八大隊に配属されます。

1932年1月18日、第一次上海事変が勃発。独立工兵第十八大隊は上海派遣混成第二十四旅団の工兵部隊に抽出され、2月5日に佐世保港を出発、7日に上海に上陸し、第九師団の指揮下に入りました。

部隊は進撃を続け、2月20日午後には国府軍との戦闘が繰り広げられる最前線、廟行鎮に到着しました。植田謙吉中将は下元熊弥少将に対し、22日午前5時30分までに廟行鎮を制圧するよう命令を下します。しかし、十九路軍は幅4.5m、深さ2mの外壕と深さ4mの鉄条網を構築し、その後方には十字砲火を浴びせるための側壕と6基の重機関銃を配置しており、歩兵の突撃は困難を極めました。

廟行鎮の戦いと壮烈な戦死

下元少将は工兵第二中隊に対し、歩兵の突撃を援護し、鉄条網を破壊するよう命じました。中隊長の松下環大尉は、竹と藁でできた即席の爆弾筒を作成し、二つの小隊からなる総勢36名の攻撃隊を編成。第二破壊隊小隊長の東島時松少尉は、さらに二つの班に分け、破壊筒5本を用意して、麦家宅でシミュレーションを行いました。

翌22日午前3時、小隊は歩兵第三中隊と合流し、敵前50メートルの地点に陣地を構築。第一班班長の馬田豊喜軍曹が発煙筒で敵の視界を遮る中、第一班が突撃を開始しました。しかし、鉄条網まであと14.5mの地点で煙幕が晴れ、敵の機関銃掃射を受け、馬田班長と小佐々吉郎一等兵を除く全員が戦死しました。

第二班班長の内田徳次伍長は、残った二組の破壊隊に突撃を命じます。作江は第一組の最後列から、江下武二、北川丞とともに敵陣へ突撃。先頭の北川が負傷し、退却しようとしたところを内田伍長に叱咤され、再び突撃。鉄条網の下に爆弾筒を差し込みましたが、脱出する間もなく爆発。江下、北川は即死、作江は爆風で左脚を吹き飛ばされ、内田伍長に何かを言い残して息絶えました。

続いて第二組も突撃に成功。敵が怯んだ隙に、馬田軍曹が戦死した兵士から手榴弾を奪い取り、機関銃座に投擲、そのまま突撃し、3条の突破口が開かれ、歩兵が突入し敵陣を陥落させました。

作江伊之助は、廟行鎮の戦いにおいて、鉄条網という強固な防御陣地を破壊するために、自らの命を顧みず爆弾を抱えて突撃し、散華しました。彼の勇気ある行動は、爆弾三勇士として、長きにわたり語り継がれています。

史跡

忠烈作江伊之助君の碑 (大谷本廟)

関連項目

爆弾三勇士

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