俘囚

俘囚（ふしゅう）について

俘囚は、陸奥や出羽の蝦夷が朝廷の支配下に入った結果、および戦時捕虜に該当する者を指します。これは「夷俘」とも称され、歴史的な背景に基づいて形成された特別な身分です。ここでは、この俘囚の概念をさまざまな観点から考察します。

移配俘囚

7世紀から9世紀にかけて、大和と蝦夷との間には連続的な戦争、すなわち蝦夷征伐が展開されました。この戦争の末に、大和へ服従した蝦夷の中から強制的に移住させられた集団を移配俘囚と呼びます。移住先は九州を含む全国各地に及びました。移配の目的は以下のように多岐にわたります。

1. 生命の安全と生活の安定: 蝦夷たちは同族から裏切り者として狙われる危険にさらされており、安全な生活を求めていました。
2. 皇化の促進: 故地から切り離され、和人との同化を進めるための施策としても機能しました。
3. 軍事力の利用: 移配された蝦夷は、朝廷の軍事力としての役割も果たしました。

俘囚の生活とその後

移配された蝦囚は、国司によって監督され、食糧支給や税免除の特権が与えられましたが、実際には定住先で自立することは難しく、賃金のような俘囚料に依存する生活が続きました。狩猟や武芸の訓練が認められる一方で、俘囚と一般公民との間にはさまざまな摩擦がありました。812年には、俘囚の中から優れた者を選び、彼らに刑罰権を与える制度も設けられました。

9世紀半ばには、国司の指揮の下で国衙軍制に移行し、移配俘囚は主要な軍事力としての位置づけを持っていました。870年には、貞観の入寇に対抗するために、多くの蝦夷が動員され、彼らの戦闘能力が評価されました。しかし、この時期、移配俘囚の間でのトラブルも増加し、813年から883年にかけての数回の騒乱が発生しました。

こうした騒乱は、彼らの待遇改善を求める動きによって引き起こされたと考えられます。最終的に897年には、朝廷が全国の移配俘囚を奥羽へ還住することが決定され、実行されました。

奥羽俘囚

一方、奥羽にとどまった蝦夷たちは、通常の租税を免除され、陸奥・出羽の国衙からの支援を受けることで生活していました。彼らは特産物を朝廷に貢ぎ、服従を誓うことで、不安定な地位ながらも安定した生活を得ていました。彼らの中からは、安倍氏や清原氏、奥州藤原氏などが台頭し、地域の勢力を形成しました。これにより、俘囚という立場は、次第に文化的に他の日本人と大差ないものとなり、鎌倉幕府の支配下では俘囚に対する特別視も薄れていきました。

俘囚となった和人

『続日本紀』には、元々は蝦夷ではない和人が、蝦夷に捕虜として捉えられた例も記録されています。このケースでは、7世代を経て俘囚となった大伴部押人が、朝廷に対して自分たちの祖先の出自を説明し、俘囚の名を除くよう願い出たことが語られています。朝廷はこれを許可し、彼らは公民へと戻る道を得ました。

結論

俘囚の歴史は、戦争の結果として生まれた特異な社会的地位を示しています。彼らの生活や文化、そして語られない歴史が現在の日本社会にどのように影響を与えたのかを理解することは、我々が歴史を学ぶ上で重要な視点となるでしょう。

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