信子 (映画)

映画『信子』(1940):

清水宏監督による映画『信子』は、1940年4月9日に公開された作品です。原作は、雑誌『主婦の友』で連載されていた獅子文六の小説『信子』。松竹の宣伝では「女性版『坊っちゃん』」とも謳われました。

あらすじ

物語の主人公は、小宮山信子（高峰三枝子）。九州から上京し、新任の女学校教師として教鞭を執ることになります。上京後、信子は芸者の置屋を経営する親戚のお佳（飯田蝶子）の家に下宿します。

赴任した女学校で、信子は校長から体育の授業を担当すること、そして地方訛りを直すように忠告を受けます。生徒たちは信子の訛りを嘲笑し、教師としてのスタートは決して順風満帆ではありませんでした。それでも体育教師として授業を進めていく中で、芸者見習いのチァー子（三谷幸子）が弁当を届けに来たことをきっかけに、信子が置屋に下宿していることが学校中に知れ渡ってしまいます。その結果、信子は置屋を出て、女子寮の舎監として住み込むことになります。

女学校には、有力者である細川夫人（吉川満子）とその娘の穎子（三浦光子）がおり、他の教師たちは彼女らに振り回されていました。しかし、信子は穎子に対し、親の威光を恐れて依怙贔屓することなく、毅然と向き合います。他の生徒たちは、寮監として共に生活する信子を慕うようになり、穎子に対して反感を抱くようになります。穎子は孤立を深め、ついにはガス自殺を図りますが、未遂に終わります。

この事件は学校内で不祥事として扱われ、信子一人が責任を負わされそうになります。しかし、穎子の父である細川源十郎（奈良真養）は、娘に真剣に向き合ってくれた信子に感謝の念を示します。

キャスト

小宮山信子: 高峰三枝子
細川頼子／細川穎子: 三浦光子
関口校長: 岡村文子
保坂教頭: 森川まさみ
吉岡先生: 高松栄子
細川源十郎: 奈良真養
細川夫人: 吉川満子
お佳さん: 飯田蝶子
チァー子さん: 三谷幸子

スタッフ

監督: 清水宏
製作: 大辻梧郎
原作: 獅子文六
脚本: 長瀬喜伴
撮影: 厚田雄春
音楽: 伊藤宣二

映画が描くもの

映画『信子』は、戦前の女学校を舞台に、新任教師の成長と生徒たちの人間模様を描いています。地方から出てきた信子が、都会の学校で様々な困難に立ち向かいながら、教師として、そして人間として成長していく姿は、観るものに勇気を与えます。また、生徒たちの葛藤や友情、そして社会との関わりを通して、普遍的なテーマを問いかけています。

関連情報

主題歌1: コロムビアレコード「信子の歌」(作詞: 西条八十、作曲: 伊藤宣二、唄: 高峰三枝子、渡辺はま子)
主題歌2: コロムビアレコード「乙女の歌」(作詞: 西条八十、作曲: 古関裕而、唄: 松原操)
関連作品: 信子とおばあちゃん - 獅子文六による本作の原作「信子」と、もうひとつ「おばあさん」を共用して新規製作されたNHKの連続テレビ小説。

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