奈良真養

奈良真養（なら しんよう）

日本の映画俳優、奈良真養は、1896年11月30日に秋田県で生まれ、1977年11月26日に80歳でその生涯を閉じました。彼の映画界への貢献は、二枚目俳優としての輝かしい活躍に留まらず、戦後の演技指導、そして鎌倉彫の師範という意外な才能にも及びます。

生い立ちと映画界入り

奈良真養は、秋田県北秋田郡大館町（現在の秋田県大館市）で、鉱山師の父・真平と母・とめの長男として生を受けました。1914年に秋田県立大館中学校（現在の秋田県立大館鳳鳴高等学校）を卒業後、小坂鉱山で3年間勤務。その後上京し、農商務省工業試験所に職を得ます。しかし、1920年2月、松竹キネマ合名社の俳優募集に応募したことが、彼の人生を大きく変えることになります。240人の中から選ばれた男性120人・女性5人の合格者の一人として、同年4月1日に小山内薫が主宰する松竹キネマ俳優学校に入学。同期には伊藤大輔、鈴木伝明、澤村春子、岡田宗太郎らがいました。6ヶ月の課程を修了後、松竹蒲田撮影所に入社し、翌1921年に野村芳亭監督の『夕刊売』で映画デビューを果たしました。

松竹蒲田の二枚目俳優として

1923年1月、柳さく子、梅村蓉子、河村黎吉らとともに準幹部に昇格。同年公開の池田義信監督『現代の女性』で栗島すみ子と共演以降、島津保次郎監督『人肉の市』、牛原虚彦監督『大地は怒る』などの作品で重要な役を演じ、1924年1月には幹部に昇格しました。池田監督・栗島主演作品では栗島の相手役を度々務め、『嘆きの孔雀』『悲しき恋の幻想』などに出演。意志的で端正な顔立ちから、柳さく子、五月信子、川田芳子、英百合子、田中絹代、松井千枝子ら、蒲田の看板女優たちとの共演も多く、二枚目俳優として人気を博しました。島津保次郎監督の『上陸第一歩』、小津安二郎監督の『美人哀愁』、成瀬巳喜男監督の『生さぬ仲』など、数々の名作にも主演格で出演しています。

戦後の活動と引退

1932年以降は脇役としての出演が多くなりましたが、その手堅い演技で蒲田から大船へ撮影所が移ってからも、中心的な俳優として活躍し続けました。1934年には、麻雀賭博に関与したとして検挙されるという事件もありましたが、戦後は吉村公三郎監督の『安城家の舞踏会』、日映演製作の『暴力の街』などに脇役で出演する傍ら、松竹大船撮影所の演技課長を務めました。1956年の定年退職後も大船の契約俳優として数本の映画に出演し、1962年、羽仁進監督の『充たされた生活』での老優役を最後に映画界から引退しました。

鎌倉彫の才能

映画俳優としての活動の傍ら、奈良真養は鎌倉彫にも造詣が深く、師範の腕前を持っていたといいます。映画とは異なる分野でも才能を発揮していたことは、彼の多才さを示すエピソードです。

晩年

1977年11月26日、奈良真養は胃がんのため80歳で亡くなりました。彼の出演作品は数多く、日本映画史にその名を刻んでいます。

主な出演作品

夕刊売 (1921年)
現代の女性 (1923年)
人肉の市 (1923年)
嘆きの孔雀 (1924年)
美人哀愁 (1931年)
生さぬ仲 (1932年)
安城家の舞踏会 (1947年)
暴力の街 (1950年)
* 充たされた生活 (1962年)

奈良真養は、映画俳優としてだけでなく、演技指導者、そして鎌倉彫の師範として、多岐にわたる才能を発揮した人物でした。彼の作品は、今も多くの人々に愛され続けています。

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