信府統記

『信府統記』について

『信府統記』は、江戸時代中期、享保9年（1724年）に完成した信濃国松本藩による地誌です。当時の藩主、水野忠幹の命により、家臣である鈴木重武と三井弘篤が中心となり編纂されました。この書物は、松本藩領内だけでなく、信濃国全体の地理や歴史を詳細に記述したもので、当時の社会情勢や文化を知る上で非常に貴重な資料となっています。

編纂の背景

松本藩主・水野忠幹は、藩の支配をより強固なものとするため、また領内の実態を把握するために、詳細な地誌編纂を命じました。編纂は享保7年（1722年）に開始され、忠幹の死後、後を継いだ水野忠恒の時代に完成しました。編纂に携わった鈴木重武と三井弘篤は、学識豊かな武士であり、その知識と調査によってこの大著が完成しました。

内容

『信府統記』は全32巻で構成され、その内容は多岐にわたります。松本城の開基や町割といった藩の歴史的背景から始まり、安曇郡や筑摩郡といった地域ごとの詳細な地誌、社寺の沿革、名所の紹介、近隣諸国への道筋、領地の境界などが詳しく記述されています。また、信濃国内の七藩の城の歴史も略述されており、当時の信濃国の政治状況を知る上でも重要な資料となっています。

具体的には、以下のような内容が含まれています。

松本城の歴史と城下町の詳細
安曇郡、筑摩郡の地理と歴史
各地の寺社や名所旧跡
主要な街道の道程と方角
領地境と周辺諸国との関係
信濃国七藩の城の歴史

原本と写本

原本である水野家本は、家譜を付録として含んでいたと言われていますが、現在所在は不明です。しかし、幸いにも写本がいくつか現存しており、その中でも戸田家写本と朽木文庫本が重要です。これらの写本によって、『信府統記』の内容が現在に伝えられています。

出版と復刻

『信府統記』は、明治時代に入り、1884年（明治17年）に高美屋によって木活字で初めて刊行されました。これは、本書が広く一般に知られるきっかけとなりました。

その後、信濃史料編纂会が戸田家写本をもとに「信濃史料叢書」に収録（1913年）、信濃史料刊行会が朽木文庫本をもとに「新編信濃史料叢書」に収録（1973年）と、複数の復刻版が出版されています。また、国書刊行会も1996年に高美屋版の復刻版を刊行しています。

現在では、国立国会図書館がマイクロフィルム化しており、コピーすることが可能です。また、国立国会図書館のデジタルコレクションでは、1884年（明治17年）刊行の高美屋版を閲覧することができます。

デジタルライブラリー

国立国会図書館のデジタルコレクションでは、以下の内容が公開されています。
信府統記 首巻
信府統記 巻一
信府統記 巻二
信府統記 巻三
信府統記 巻四
信府統記 巻五
信府統記 巻六
信府統記 巻七
信府統記 巻八
信府統記 巻九

古本価格

国書刊行会版は、現在約1万6000円で取引されています。これは、本書が歴史的価値の高い資料であることの証左と言えるでしょう。

関連資料

『信府統記』を理解する上で、以下の書籍も参考になります。

善光寺道名所図会
信濃奇勝録
四鄰譚藪

これらの書籍と併せて読むことで、より深く『信府統記』を理解することができるでしょう。

外部リンク

信府統記 - 国立国会図書館デジタルコレクション
* 信州デジくら

『信府統記』は、江戸時代の信濃国、特に松本藩の歴史や文化を知る上で欠かせない重要な文献です。現代においても、歴史研究者や郷土史に関心のある人々にとって、貴重な資料として活用されています。

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