信濃奇勝録

信濃奇勝録

『信濃奇勝録』は、江戸時代末期の神官、井出道貞が信濃国（現在の長野県）を詳細に調査し、その成果をまとめた地誌です。1834年（天保5年）に脱稿されましたが、出版されたのは約半世紀後の1886年（明治19年）でした。信濃全域を網羅する貴重な資料であり、各地の奇勝景観に加え、歴史、旧跡、民俗、社寺、祭事、建造物、古器物、動植物、鉱物など、多岐にわたる情報が記録されています。

概要

本書は全5巻で構成され、各巻で信濃国内の異なる地域が扱われています。文章だけでなく、豊富な図も掲載されているのが特徴です。当時の人々の生活や信仰、自然に対する認識を知る上で重要な資料となっています。

各巻の構成

巻之一: 筑摩郡
巻之二: 安曇郡、水内郡
巻之三: 佐久郡、小県郡
巻之四: 諏訪郡、伊那郡
巻之五: 埴科郡、更級郡、高井郡


各巻では、見出しとして以下のような場所や事物が紹介されています。

各巻の紹介内容

巻之一

筑摩郡の国分界、湯舟沢、野槌、木曽古道、古代の桟道、風越山、小野滝、寝覚牀、三帰、今の桟道、麝香沢、木曽踊、鞍坡瀑布、氷湍、十一鳥、御嶽、小木曽女、不種菜、洗馬古物、鏡石、牛伏、重玉松、筑摩御湯、蚦虵骨、猿手狸、花蓯蓉、沢村の異鳥、掌蓮、美が原の片石、水沢などが紹介されています。

巻之二

安曇郡では雑食橋、三光石、㹦鼠、藤橋、青島異鳥、白骨竜穴、物草太郎塚、宮城巌窟、登波離橋、誂譃全亨、鬼霰石が、水内郡では善光寺、飯縄山、戸隠山、紅葉岩窟、志垣、石炭、大鼓岩、機織石、猿丸、水内橋、弥太郎滝、貝石、火井、臭水油、ぶらん堂、端蔵主、大蜘蛛、四山一望、野尻湖水、地震瀑布などが紹介されています。

巻之三

佐久郡では松原、古石燈台、古鈴、銅馬、紫雲山什貲、玄三髭、槲岩、古陶器、蛇石、香炉岩、安養寺什貲、相生松、皓月輪、碓氷紅葉、浅間山、無名薬、亀石、駒形石、布引山、下之条古物、蟇闘、農夫異行、婆良小屋、立科山が、小県郡では四阿山、国分寺埋木、鳴石、虚空蔵山、匠人噛蛇、獅子踊、感馬、魚骨石、出浦、鴻巣、仏岩、柳草などが紹介されています。

巻之四

諏訪郡では須波乃海、諏方上下神社、御頭祭、御射山祭、御柱祭、神宝並級笠行騰、七木七石、七不思議、下諏方祭、縁起絵、斎瓮、石羊、山神の猧子、徳本釜が、伊那郡では天狗栗、風穴、勝間山仙境、馬角、鸚鵡石、真菰池、塩井、大河原、松島王墳、竹魚、駒岳、光前寺、大島山滝、闘竜、三足鶏、雲彩寺古物、銅版、冠石、蝉蕈、神代石、山吹畸人、春田打、白山窟、園原、立石、大根石、深見池、早梅花などが紹介されています。

巻之五

埴科郡では岩端蛍、円尽卓袱、野茂利、雨宮貌踊、山鳴、土鑵子、御安紅梅が、更級郡では姨捨山、醫人穴熊、白鳥山什貲、古器物、玉髄、古銅器玉石、河中島古戦場、バカ火が、高井郡では保科、墨坂三石、松皮琴嚢、一目髑髏、米子瀑布、飯盛松、無縫塔、荒井河原、弥勒石、雌垂雄垂、小菅、神戸銀杏、凹石、獅子石、秋山、山蟹などが紹介されています。

その他の情報

本書の稿本と出版時の版木は、1976年時点で現存・保管されていることが確認されています。

参考資料

『新編信濃史料叢書 第13巻』信濃史料刊行会、1976年6月
* 国立国会図書館近代デジタルライブラリーで閲覧可能な『信濃奇勝録』の各巻

『信濃奇勝録』は、江戸時代後期の信濃の姿を知る上で欠かせない貴重な文献です。自然、歴史、文化、風俗など、幅広い視点から当時の信濃を垣間見ることができます。

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