信長の野望・天翔記

『信長の野望・天翔記』は、1994年12月に光栄（現コーエーテクモゲームス）から発売された歴史シミュレーションゲームであり、「信長の野望シリーズ」の第6作にあたります。PC-9801版を皮切りに、さまざまなパソコン機種や家庭用ゲーム機に移植され、多くのファンを魅了しました。特に、PC-98版がシリーズ最後の作品となり、以降はWindowsへと移行しました。ただし、スーパーファミコン版は容量の制約から内容が大幅に修正されています。また、Windows 3.1/95/98/Me/XP版は、Windows 2000への直接インストールは困難であり、非公式な手段が必要です。2015年にはグラフィックを一新したHD版が発売され、WindowsとPlayStation Vitaで高精細な画面でプレイできるようになりました。

ゲーム概要

本作では、プレイヤーは戦国大名となり、すべての城を攻め落として全国統一を目指します。前作『覇王伝』とは異なり、本城や支城の概念がなくなり、国の概念は残っていますが、城の数が大幅に増加（214城、SFC版は120城）したため、国取りの要素は薄れました。1つの国に複数の大名家が混在していることも珍しくなく、知名度の低い大名家も多数登場しています。また、1年が春、夏、秋、冬の4期に分けられ、3ヶ月ごとにターンが進むシステムが採用されました。前作にあった従属同盟や優位同盟は廃止され、他大名家は屈服させた時点で配下となります。統一は武力による全国制覇のみで、同盟による統一はできません。

歴史イベントは前作よりも充実し、一部の家庭用ゲーム機版では実写ムービーが挿入されています。音楽面では、内政時の音楽は大名居城のある地方に応じて変化するようになり、戦争時には信長や名将には専用のBGMが用意されています。また、シナリオによる武将の間引きがなくなり、どのシナリオでも特定の年代で武将が登場するようになりました。ただし、グラフィック面では、Windows旧版では16色表示のままなど、当時の技術的な制約が見られます。

システム面での変更

システム面では、論功行賞が簡略化され、知行制が廃止されました。代わりに、内政や戦闘で得られる勲功に応じて「足軽頭」「侍大将」などの身分が上がり、最大兵数や俸禄が決定します。また、大名家を滅ぼしても大名が自害することはなく、斬首するか逃がすかを選択できます。他国情報の閲覧は自由に行えるようになり、無人の城に攻め込む場合は本丸まで到達しないと落城させられないようになりました。行動力システムが導入され、軍団長に毎ターン行動力が与えられ、内政や軍事行動を行うことになります。行動力の算出には大名の野望値が大きく影響し、野望の高い武将は行動力が多くなる反面、独立の可能性も高まります。勢力が拡大すると行動力が不足するため、軍団を編成して委任することが重要になります。

戦争面

コンピュータは好戦的で、一度の戦争で広範囲が戦場となり、複数の大名が入り乱れる乱戦が頻繁に発生します。同盟勢力との関係も重要で、場合によっては同盟勢力を攻撃することも可能です。勢力の拡大や衰退が激しく、油断すると滅ぼされる危険性があります。特に、奥羽や九州などの特定の地域は有利で、畿内や中部は不利な状況になりやすいです。本願寺家は、一向一揆の発生や大量の鉄砲の所持、一門衆の忠誠度の高さから非常に手強い勢力となります。

外交面

外交面では、「共敵」という新たなシステムが導入され、共通の敵を持つ大名との同盟が可能です。また、相手側の使者を自勢力に引き抜くこともできます。同盟は無期限で、一度結ぶと安定しますが、同盟を破棄すると家臣の忠誠度が下がるため、注意が必要です。また、勢力の劣る大名を屈服させ、家臣に加える「脅迫」が復活しました。

軍団制

本作では、全国を軍団で支配することが重要です。軍団長の人選が非常に重要で、野望の高い武将は謀反を起こしやすく、野望の低い武将は行動力が不足します。勢力が拡大すると、軍団編成は不可欠となり、軍団への指示が領国を大きく左右します。

教育システム

武将の成長がテーマであり、パラメータの種類も独特です。能力の高さを示すパラメータに加え、能力の資質を示すパラメータが存在します。武将は教育によって成長し、能力を上昇させることができます。教育の内容は多彩で、「鷹狩」、「剣術」、「茶道」、「算盤」などがあり、能力の上昇だけでなく、技能を修得することもあります。教育には師範役が必要で、師範役の能力が高いほど効果が高くなります。また、AI（人工知能）が導入され、配下武将がプレイヤーの戦略思考を学習します。パソコン版では、武将との会見が可能で、アルゴリズムの学習状態を確認したり、指導を行うことができます。

適性・技能の導入

本作では、武将に兵科適性（足軽、騎馬、鉄砲、水軍）と技能が設定されました。兵科適性はSからEまでの6段階でランク付けされ、技能には挑発、焼討、弁舌、流言、煽動、流出、暗殺、一喝などがあります。これらの要素により、武将の個性化が図られ、戦略の幅が広がりました。また、適性や技能は教育や戦闘によって成長・習得することもあります。

職業

一部の武将には忍者、僧侶、剣豪、茶人などの職業が設定されており、戦略に影響を与えることがあります。

官位・役職

前作に引き続き、官位が登場し、朝廷に献金することで叙任を受けることができます。「征夷大将軍」は役職として独立しており、特定の条件を満たすことで就任イベントが発生します。また、特定の地域を支配することで就任できる「管領」や「探題」などの役職も登場します。

シナリオとパワーアップキット

収録シナリオは機種によって異なりますが、基本的には「信長誕生」「桶狭間の戦い」「信長包囲網」「本能寺の変」があります。パワーアップキット版では、さらに「信長元服」「関ヶ原前夜」などのシナリオが追加され、武将も300人追加されています。また、戦死の有無や本能寺の変の発生制限、城名や家紋の変更も可能になっています。

スーパーファミコン版は、シナリオや仕様が大幅に異なり、城の数が減少し、武将も削減されています。しかし、歴史イベントやコマンド面はパワーアップキット版に準拠しています。

音楽

音楽は菅野よう子が担当しました。PC-98版では、内蔵音源とCD-DA音源を選択できますが、CD-DA音源は収録時間が短いため、曲数が少なくなっています。移植版でも音源が異なる場合があります。

『信長の野望・天翔記』は、独自のシステムと深い戦略性が魅力の歴史シミュレーションゲームです。武将の成長、多様な戦術、複雑な外交など、やりこみ要素が満載で、多くのファンに愛されています。

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