修円

修円（しゅえん）は、宝亀2年（771年）に生まれ、承和2年6月13日（835年7月12日）に没した、平安時代前期の法相宗の僧です。俗姓は小谷氏で、大和国北谷（現在の奈良県）の出身です。檉生禅師（ていしょうぜんじ）とも称されます。

彼は、当初、義真から天台教学を学びましたが、義真の没後、その跡を継いで天台座主となることを試みたものの、宗徒の反対にあい、実現しませんでした。その後、大和国室生寺に移り住み、独自の「室生天台」を形成したとされていますが、これは同名の「円修」とは別人であるという指摘があります（逵日出典の著作を参照）。

修円は、大和国興福寺の賢憬（けんけい）に師事し、法相宗を深く学びました。延暦13年（794年）には、比叡山根本中堂の落慶供養において堂達を務めるという重要な役割を果たしました。さらに、延暦24年（805年）には、最澄から灌頂（かんじょう）を受け、天台宗の教えにも触れています。弘仁元年（810年）には律師（りっし）に任じられ、弘仁3年（812年）には興福寺の別当（べっとう）に就任しました。

興福寺別当として、修円は境内に伝法院を設立し、そこで深密会（じんみつえ）を始めました。深密会は、法相宗の教義を深く探求するための会であり、修円の学識と指導力によって多くの僧侶が集まりました。また、天長4年（827年）には、少僧都（しょうそうず）という高い僧位に昇進しました。

修円は、当時としては新しい仏教であった天台宗や真言宗にも理解を示し、空海（くうかい）とも親交があったとされています。彼の柔軟な姿勢は、仏教界における新たな潮流を生み出す一因となりました。修円の活動は、法相宗だけでなく、天台宗、真言宗にも影響を与え、平安時代初期の仏教界に大きな足跡を残しました。特に興福寺における伝法院の設立と深密会の開催は、法相宗の教義研究を深め、後世の仏教にも大きな影響を与えたといえるでしょう。

修円は、その生涯を通じて、法相宗の研鑽に励むとともに、新しい仏教の教えにも理解を示し、当時の仏教界の発展に貢献した僧侶でした。

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