賢憬

賢憬（けんけい）についての詳細

賢憬は和銅7年（714年）に生まれ、延暦12年（793年）にその生涯を閉じた奈良時代の僧侶であり、法相宗の重要な代表者の一人です。彼の本名は荒田井氏で、尾張国に生まれ育ちました。また、賢璟という名でも知られており、尾張僧都または尾張大僧都とも呼ばれています。

賢憬は、興福寺において宣教を学び、特に唯識法相を中心に修行を重ねました。彼の信仰心と研究熱心な姿勢は、後に彼が行った多くの社会貢献へと繋がっていきます。天平15年（743年）には、同族である子麻呂を優婆塞に推薦するなど、教えを広める努力を惜しみませんでした。また、754年には唐から来日した僧侶・鑑真を難波で迎え入れ、翌年には彼から具足戒を受けるという重要な経験を持っています。

758年には唐招提寺に一切経420巻を奉納。このように、賢憬は教義の普及とともに、文化の発展にも強く寄与しました。774年には律師に任じられ、宗教的な地位も高まりました。

特筆すべきは、775年頃に大和国の室生山で延寿法を修行し、その結果として山部皇太子（後の桓武天皇）の病を癒したことです。この出来事により、賢憬は桓武天皇から深い信任を受けるに至ります。780年には多度大社神宮寺に三重塔を建立し、また宝亀年間中には室生寺を創建するなど、宗教建築の推進に努めました。

784年に大僧都に任じられると、彼の名声はさらに高まりました。延暦4年（785年）には、最澄の戒牒や『多度神宮寺伽藍縁起並資財帳』に僧綱の一人として署名を行ったことで、その影響力は末永く残ることになります。そして793年、彼は遷都に際して新たな地の選定にあたるなど、国家的な重要事項にも参与しました。最終的に、賢憬は同年11月8日に80歳でこの世を去りました。

彼はその幅広い学識でも知られ、高名な僧侶である大安寺戒明が葛藤の中で持ち帰った書物『釈摩訶衍論』を調査し、彼が偽書であると判定したことは特に歴史的に重要な出来事です。このように、賢憬の活動は単に宗教に留まらず、多くの弟子たちとともに日本の仏教界に大きな影響を及ぼしました。彼の弟子の中でも特に修円や明福は知られており、彼らが賢憬の教えを引き継いでいったことも見逃せません。

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