修学旅行列車

修学旅行 列車とは

修学旅行列車とは、1949年（昭和24年）頃から設定された、修学旅行客輸送のための団体専用列車の総称です。学校行事としての修学旅行の始まりは、1886年（明治19年）に東京師範学校が行った長距離遠足に遡ります。

歴史

明治～昭和初期

修学旅行の原型とされるのは、1886年2月に東京師範学校が実施した東京～銚子間の徒歩旅行です。この「長途遠足」が、修学旅行のルーツとされています。

「修学旅行」という名称が初めて使われたのは、1886年12月発行の『東京茗溪会雑誌』に掲載された報告書でした。これは、東京師範学校（後の高等師範学校）の男子生徒が下野地方へ旅行した際の記録をまとめたものです。

1888年（明治21年）には、文部省が「尋常師範学校設備準則」で初めて「修学旅行」という名称と実施基準を公式に定め、長距離遠足をモデルとした修学旅行が普及しました。

その後、旧制中学校や高等女学校にも広がり、昭和時代には旧制高等小学校でも宿泊を伴う修学旅行が許可されるようになりました。戦時中は「聖地参拝旅行」と称し、伊勢神宮などを巡る旅行が行われましたが、1943年（昭和18年）に戦局悪化により禁止されました。この時期の移動手段は鉄道が中心で、乗客が多い場合は車両が増結されることもありました。

第二次世界大戦後

1948年（昭和23年）に国鉄が学生団体の割引を再開したことで、修学旅行も復活しました。1950年代になると本格的に再開され、東京 - 伊豆間の温泉観光準急列車の車両を週末以外に利用して、日光・京都・大阪方面への「修学旅行専用列車」が設定されました。

1950年（昭和25年）頃には、東京 - 京都・大阪間で「修学旅行集約輸送臨時列車」が登場しました。これは、予め修学旅行列車のダイヤを設定しておき、それに沿って運行するもので、学校や地域ごとに臨時列車を仕立てる手間が省けるというメリットがありました。

また、秋には上野駅などから長瀞、奥多摩、河口湖方面への中・短距離の学童専用臨時電車も運転されました。1958年（昭和33年）には、文部省の通達により遠足・修学旅行が教育課程に位置づけられたことを受け、修学旅行列車専用車両の製造が要望され、翌1959年（昭和34年）には初の専用電車となる155系が登場しました。

国鉄はその後も159系や167系などの修学旅行用車両を製造しましたが、私鉄では近畿日本鉄道が1962年（昭和37年）に全車2階建て車両の20100系「あおぞら」を登場させました。

昭和後期～平成～令和

しかし、1970年（昭和45年）に新幹線による修学旅行が開始されると、在来線での「集約臨」は急速に衰退し、1975年（昭和50年）頃にはほぼ消滅しました。少子化や交通機関の多様化、旅行先の多様化などにより、団体列車の設定自体が減少しています。

かつては首都圏と北海道を結ぶ修学旅行団体列車も運行されていましたが、航空機や海外旅行を選ぶ学校が増えたことで、2006年（平成18年）に運転を終了しました。

現在では、一部のJR線区や新幹線で臨時ダイヤによる修学旅行列車が運行されています。関西では阪神なんば線を活用した直通列車の構想もありましたが、実現には至っていません。

近鉄では、「あおぞら」シリーズが修学旅行輸送を担ってきましたが、車両の老朽化が進み、代替として12200系を改装した15200系「新あおぞらII」が運用されています。また、修学旅行シーズンには、急行形車両なども運用されることがあります。

国鉄「集約臨」の沿革

1950年（昭和25年）に日本ツーリストが運行を開始した修学旅行専用列車が、共同運行となり「修学旅行集約輸送臨時列車」の起源となりました。

1958年（昭和33年）には、80系電車を使った品川 - 京都間の「集約臨」が、当時の特急列車に匹敵する速度で運転されました。これが、後の155系電車誕生のきっかけとなりました。

1959年（昭和34年）には、初の修学旅行専用電車である155系電車が「ひので」・「きぼう」として運行を開始しました。これらの列車は、市販の時刻表にも掲載されていました。

その後、「こまどり」やキハ58系800番台を使った「おもいで」・「とびうめ」などの修学旅行列車が登場しましたが、新幹線の開業や利用者の減少により、1970年代に次々と廃止されました。

修学旅行用車両

修学旅行専用列車に充当するために製造された車両で、学生の利用や乗降回数の少なさなどを考慮した特殊な構造を持つものもあります。国鉄の修学旅行用車両は、黄色と朱色の塗装が特徴でした。

国鉄

155系
159系
167系
キハ28・58形（800番台）

近鉄

20100系「あおぞら号」
18200系「あおぞらII」
18400系「あおぞらII」
15200系「新あおぞらII」

近鉄では、特急用から改造された車両が修学旅行以外の団体列車にも使用されています。

修学旅行列車