俵物

俵物（たわらもの）とは

俵物とは、江戸時代の長崎貿易において、対清（中国）貿易のために輸出された海産物の総称です。これらの品々は俵に詰められて輸出されたことから、この名前で呼ばれるようになりました。

俵物三品

特に重要な俵物として、「俵物三品（たわらものさんぴん）」と呼ばれる3つの乾物がありました。それは、煎海鼠（いりなまこ/いりこ）、乾鮑（ほしあわび）、鱶鰭（ふかひれ）です。これらは中華料理における高級食材として珍重され、清（当時の中国）での需要が非常に高く、日本からの輸入が盛んに行われました。

煎海鼠（いりなまこ/いりこ）: ナマコを乾燥させたもので、独特の食感と風味が特徴です。中華料理ではスープや煮込み料理に使われます。
乾鮑（ほしあわび）: アワビを乾燥させたもので、高級食材として知られています。祝い事や特別な席で使われることが多く、滋養強壮の効果も期待されています。
鱶鰭（ふかひれ）: フカ（サメ）のヒレを乾燥させたもので、こちらも高級食材として有名です。姿煮やスープとして使われ、独特の食感と風味が楽しめます。

これらの「俵物三品」は、いずれも日本国内ではあまり消費されず、ほぼ全量が中国へ輸出されました。

貿易決済と俵物

当時の日本は、中国から生糸や漢方薬などを輸入する際に、金や銀を支払う必要があり、これらの貴金属の流出が深刻な問題となっていました。そこで、江戸幕府は、正徳の治の一環として海舶互市新例を定め、金銀銅の代わりに俵物の輸出による貿易決済を奨励するようになりました。これにより、日本の経済は安定し、中国との貿易もより円滑に進むようになりました。

その他の俵物（諸色）

俵物として輸出されたのは、「俵物三品」だけではありません。寒天、昆布、鰹節、鯣（スルメ）なども俵に詰められて輸出されました。これらの品々は、「俵物三品」と区別して「（俵物）諸色」と呼ばれていました。

俵物の影響

俵物は、日本の経済に大きな影響を与えました。特に「俵物三品」は、長崎貿易において重要な輸出品となり、日本の経済を支える重要な役割を担いました。また、これらの海産物の輸出は、日本の漁業や加工業の発展にもつながりました。

俵物は、江戸時代の長崎貿易を語る上で欠かせない重要な存在であり、当時の日本の経済や文化に大きな影響を与えたと言えるでしょう。

参考情報

長崎貿易
江戸時代に行われた長崎における貿易。オランダや中国との交易が盛んでした。
北前船
江戸時代から明治時代にかけて、日本海を航行した廻船のこと。俵物などの輸送にも活躍しました。
外部リンク
* 俵物 - コトバンク

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