俺の血が騒ぐ

『俺の血が騒ぐ』（おれのちがさわぐ）は、昭和36年（1961年）1月9日に公開された日本の海洋アクション映画です。日活が製作し、当時の人気スターであった赤木圭一郎が主役を演じました。海を舞台にしたサスペンスとドラマが見どころの作品です。

物語の中心となるのは、大学を卒業間近の青年、笠原邦夫です。彼と兄の昭は、突然の父親の死によって平穏な日常を奪われます。父親が何者かに殺害されたことを知った邦夫は、深い悲しみと同時に、犯人への激しい憎悪に駆られます。復讐を決意した邦夫は、そのために手段を選ばなくなり、ある人物からの示唆を受けて、父親殺しの真相を探るべく密輸船の船員という危険な道を選びます。

復讐の鬼と化した邦夫の変貌は、周囲の人々にも影響を与えます。特に、彼の婚約者である節子は、以前とは別人のようになってしまった邦夫の姿に戸惑い、感情的な距離を感じ始めます。彼女は、そんな自分に寄り添い、心の安らぎを与えてくれる邦夫の兄・昭に次第に惹かれていきます。兄弟の間で揺れ動く節子の心、そしてそれぞれの立場で苦悩する邦夫と昭。父の死を巡る謎と、複雑に絡み合う人間関係が物語を重厚なものにしています。邦夫が密輸船という非合法な世界でどのように振る舞い、真実に迫っていくのか、そして兄弟や婚約者との関係はどのように変化していくのかが、緊迫感を持って描かれます。

本作の大きな特色の一つは、そのリアリティを追求したロケーション撮影です。撮影は、当時、東京と北海道の釧路を結ぶ定期航路船として実際に運航していた「大雪山丸」の船内で行われました。これにより、広大な海原を進む船上での生活や、密輸という閉ざされた空間の雰囲気が生々しく捉えられ、作品の臨場感を高めています。

主演の赤木圭一郎は、復讐に燃える青年・笠原邦夫を熱演。その繊細かつ情熱的な演技は、当時の観客を魅了しました。共演には、邦夫の兄・昭役に沢本忠雄、邦夫の婚約者・節子役に笹森礼子が名を連ね、物語の重要な人物を演じています。この他にも、小沢栄太郎、葉山良二、安部徹といった日活を代表する個性豊かな俳優たちが脇を固め、作品世界に深みを与えています。

制作陣には、山崎徳次郎が監督としてメガホンを取り、脚本は池田一朗、長谷部安春、加藤新二の三名が共同で手掛けています。音楽は山本直純が担当し、映画の雰囲気に合ったメロディを提供。撮影は姫田真佐久、編集は鈴木晄がそれぞれ担当しました。原案は山崎忠昭、企画は岩井金男が務め、助監督は鍛冶昇が担当しました。

また、本作では主演の赤木圭一郎自身が歌う楽曲が印象的に使用されています。主題歌は「風は海から吹いてくる」、挿入歌には映画と同名の「俺の血が騒ぐ」が使われ、物語の要所で流れるこれらの歌が、主人公の心情やドラマを盛り上げています。

本作は公開当時、『刑事物語 ジャズは狂っちゃいねえ』と併映されました。

『俺の血が騒ぐ』は、若きスター赤木圭一郎の魅力に加え、サスペンスフルなストーリー展開、そして臨場感あふれる海上ロケが見事に融合した、日活アクション映画の一本として記憶されています。復讐劇という普遍的なテーマを扱いながらも、複雑な人間関係を丁寧に描写することで、単なるアクションに留まらない深みを持つ作品となっています。

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