倉橋由美子

倉橋由美子

倉橋由美子（1935年10月10日 - 2005年6月10日）は、高知県出身の日本の小説家です。本名は熊谷由美子で、旧姓は倉橋です。彼女は、日本の女流作家としては珍しい、抽象的で寓話的な作風で知られています。

経歴

倉橋由美子は、歯科医の長女として生まれました。精神科医を目指していましたが、医学部受験に失敗。その後、日本女子衛生短期大学別科歯科衛生コースに入学し、歯科衛生士の資格を取得しました。しかし、文学への情熱を捨てきれず、明治大学文学部仏文学科に進学し、斎藤正直や中村光夫に師事しました。

大学在学中の1960年、小説『パルタイ』を発表し、明治大学学長賞を受賞。この作品は、『文學界』にも転載され、芥川賞候補にもなりました。その後も、『夏の終り』で再び芥川賞候補となりますが、受賞には至りませんでした。

1961年には、初の長編小説『暗い旅』を刊行しましたが、ミシェル・ビュトールの『心変わり』の模倣であると指摘を受け、「外国文学模倣論争」に発展しました。しかし、倉橋自身は、ビュトールの手法から影響を受けたことを認めています。

1964年に結婚し、その後、体調を崩してアメリカ留学を辞退。1965年には、父と娘の近親相姦を扱った長編小説『聖少女』を発表し、大きな話題となりました。1966年よりアメリカのアイオワ州立大学に留学し、翌年帰国しました。

帰国後は、『スミヤキストQの冒険』や『アマノン国往還記』など、数々の作品を発表。1971年からは、『夢の浮橋』に始まる「桂子さんシリーズ」を長期にわたって創作し、作風の幅を広げました。

1980年代以降は、ワープロを用いて執筆を開始し、『大人のための残酷童話』はロングセラーとなりました。1987年には、『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞を受賞しました。

晩年は体調を崩し、長編小説の執筆は行いませんでしたが、児童文学の翻訳にも力を注ぎました。2005年6月10日、拡張型心筋症により69歳で亡くなりました。

受賞歴

1960年 - 「パルタイ」で明治大学学長賞
1961年 - 『パルタイ』で女流文学者賞
1962年 - 田村俊子賞
1987年 - 『アマノン国往還記』で泉鏡花文学賞
2006年 - 明治大学特別功労賞（没後）

主な作品

パルタイ
暗い旅
聖少女
スミヤキストQの冒険
アマノン国往還記
夢の浮橋（桂子さんシリーズ）
大人のための残酷童話

倉橋由美子は、その独特な作風と世界観で、日本の現代文学に大きな影響を与えた作家の一人です。彼女の作品は、今も多くの読者に愛され続けています。

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