中村光夫

中村 光夫について

中村光夫（なかむら みつお）は1911年2月5日に東京都で生まれ、1988年に没した日本を代表する文芸評論家、劇作家、小説家です。本名は木庭一郎（こば いちろう）であり、明治大学の名誉教授であり、日本の文芸界を代表する著名な存在でした。その業績からは多くの作品が生まれ、彼の批評は日本文学の発展に寄与しています。

生い立ちと教育

中村は東京都秋葉原の下谷区で育ち、祖父は医師として働いていました。彼は東京市誠之尋常小学校から進学し、東京高等師範学校附属中学校へと進みます。1928年には第一高等学校に入学し、1931年には東京帝国大学法学部に入学しましたが、数ヶ月後に退学。その後、同年に文学部の仏文学科へ転入し、1935年に卒業。卒業論文のテーマは著名なフランス作家ギ・ド・モーパッサンでした。この時期、中村はプロレタリア文学からの影響を受け、自身でも作品を書いていました。

文芸活動の始まり

大学時代から彼は『文學界』に評論を発表し始め、1935年には文芸時評を連載し、新进の文芸評論家としての地位を確立します。また、1936年には「二葉亭四迷論」で第一回池谷信三郎賞を受賞します。

1938年にはフランス政府から招かれてパリ大学に留学。第二次世界大戦が勃発したため、1939年に帰国し、同年より同人誌『批評』の発行に関わります。戦後は鎌倉アカデミアで教鞭を執り、1949年からは明治大学教授として学生を指導しました。

主要作品と影響

彼の著書の中で特に知られているのが『風俗小説論』です。この作品では日本の私小説を厳しく批判し、戦後の文芸批評へ大きな影響を与えました。また、1951年にはカミュの「異邦人」を巡って論争を繰り広げ、翌年には読売文学賞を受賞しました。他にも『谷崎潤一郎論』、『志賀直哉論』など、数多くの文芸批評を発表し、様々な著名作家について否定的な見解を示しました。

戯曲と文学業績

1957年には初の戯曲「人と狼」を発表し、旋風を巻き起こしました。1959年には「ふたたび政治小説を」と題した評論を発表し、物議を醸しました。1960年代には累計10冊の季刊同人誌『聲』を発行し、他の文士たちとも交流を深めることとなります。

知識人としての人生

近代仏文学に対する知識を生かし、フローベルの『ボヴァリー夫人』の翻訳や、批評の特徴についての独自の見解を示しました。中村は作風として「ですます」調を多用しましたが、その理由は原稿料を増やすための一手段だったと語っています。

最後の years

1981年には明治大学を定年退任し、1982年には文化功労者に選ばれました。1988年7月12日に肺炎のため、神奈川の自宅で息を引き取りました。77歳の生涯を通じて彼は、日本の文芸界における重要な人物としてその名を刻み続けることとなりました。

家族と人間関係

家族には、多くの著名な人物がいます。姉の木庭しげ子は作家深田久弥の妻であり、兄弟も理論物理学者として名を馳せています。最初の妻との間に二人の子供があり、その後に再婚した木庭久美子さんも劇作家でした。彼は亡くなる直前にカトリックの洗礼を受けました。

まとめ

中村光夫の存在は、日本文学への多大な貢献として今なお評価されています。彼の理論と批評、創作活動は日本文芸の発展において決定的な役割を果たし、その著作は今後も読み継がれることでしょう。

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