値嘉島

値嘉島（ちかのしま）：幻の令制国

値嘉島（ちかのしま）は、かつて日本の地方行政区分であった令制国の一つで、値嘉嶋、値賀嶋とも表記されます。西海道に所属し、現在の長崎県の五島列島（平戸島と彼杵郡に所属していた江島・平島を除く）とその附属島嶼を領域としていました。876年に肥前国から分立しましたが、10世紀初頭までに廃止された短命な国です。

値嘉島の成立

値嘉島の成立は、「日本三代実録」に記されています。876年、大宰権帥であった在原行平が、肥前国松浦郡の庇羅郷（ひらごう）と値嘉郷（ちかごう）の2つの郷の長（おさ）の力が弱まっていること、そしてこの島が外交上重要であることを理由に、朝廷に上申しました。その結果、庇羅郷は上近郡（かみつちかのこおり）に、値嘉郷は下近郡（しもつちかのこおり）にそれぞれ昇格し、肥前国から分離して値嘉島として独立。島司が置かれることになりました。

値嘉島の領域

値嘉島の領域は、上近郡（庇羅郷）が現在の旧田平町を除く平戸市全域、下近郡（値嘉郷）が現在の小値賀町・新上五島町・五島市、そして佐世保市の一部（旧宇久町）にあたります。島府（国の役所）と上近郡の郡衙（郡の役所）は平戸にあったと推測されていますが、一宮（その地域で最も格式の高い神社）や下近郡の郡衙の所在地は分かっていません。

値嘉島の廃止

成立から半世紀も経たない10世紀初頭に編纂された「延喜式」には、値嘉島の記載がありません。このことから、値嘉島は2つの郡（上近郡と下近郡）ともに廃止され、肥前国松浦郡に再び統合されたと考えられています。

短命に終わった背景

値嘉島が短期間で廃止された理由は定かではありません。しかし、島司を置いたにもかかわらず、国を維持するだけの力がなかった、あるいは周辺地域との関係がうまくいかなかったなどの要因が考えられます。また、中央政府の政策転換も影響した可能性もあります。

幻の国「値嘉島」

値嘉島は、その存在期間が短かったため、歴史の表舞台に登場することはほとんどありません。しかし、その成立と廃止の経緯は、当時の地方行政や外交政策を考える上で貴重な資料となります。今では幻の国となった値嘉島ですが、その足跡は五島列島と平戸の歴史の中に確かに刻まれています。

関連項目

松浦郡
平戸島
五島列島
令制国一覧

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