在原行平

在原行平の生涯と業績

在原行平（ありわらのゆきひら）は、平安時代の初期から前期にかけて活躍した公卿であり、歌人としても名が知られています。彼は平城天皇の第一皇子、阿保親王の子で、官位は正三位・中納言にまで昇進しました。行平はまた『小倉百人一首』でも知られ、中納言行平として登場します。

経歴

行平は天長3年（826年）、父・阿保親王の意向により、兄弟とともに在原朝臣姓を賜与されて臣籍降下しました。承和9年（843年）に亡くなった阿保親王の子どもたちの中で、行平は比較的早い段階から官途を進め、特に民政においてその才を発揮しました。

承和7年（840年）には仁明天皇の蔵人に任命され、次の年には従五位下、さらに侍従に叙任されるなど、昇進ぶりは目覚ましいものでした。その後も芸能や地方官として活躍し、斉衡2年（855年）には従四位下に叙せられ、因幡守となって地方に転任しました。行平の和歌の一つは、この地方赴任の際に詠まれたものと伝えられています。

また、彼は須磨に蟄居していた時期があり、その時に浜辺で見つけた流木から須磨琴を製作したという逸話が伝わっています。この頃の出来事は、後に謡曲『松風』の題材ともなりました。

清和朝では、左京大夫や大蔵大輔、左兵衛督などの役職を経て、貞観12年（870年）には参議に補任され、公卿の仲間入りを果たしました。特に興味深いのは、彼が参議の職にありながら蔵人頭も兼ねていた点で、これは非常に稀なケースです。

行平は貞観15年（873年）には従三位・大宰権帥に叙任され、九州地方の統治に関する様々な施策を提出しました。彼の提唱により、対馬島の年貢を軽減するために水田の整備がなされ、また地元の重要性を考慮して郡の昇格も進められました。

元慶5年（881年）には大学別曹奨学院を設立しました。この学院は、藤原氏の勧学院と並び称され、行平の死後は大学寮の南曹として重要な役割を果たしました。また、元慶6年（882年）には中納言に昇進し、仁和3年（887年）に引退しました。

彼はその生涯の中で和歌にも多くの足跡を残しました。勅撰歌人として4首を『古今和歌集』に残し、他の勅撰和歌集にも合計11首が載せられました。また、880年代中頃には「民部卿行平歌合」を主催し、これが現存するところでは最古の歌合とされています。

和歌の魅力

行平が詠んだ和歌の一つには、以下のような作品があります。

「これでお別れです。でも因幡の国の山に生える松のように『ここでずっと待っているよ』とあなたが言うならばすぐにでも帰って来ましょう。」

この和歌は、現代ではいなくなった飼い猫の帰りを願うまじないとして広く知られ、親しまれています。彼の和歌は時代を超えて多くの人に愛されているのです。

最後の日々

晩年の行平は、宇多天皇の寛平5年（893年）7月19日に71歳で亡くなりました。その最終官位は前中納言の正三位でした。彼の業績は、平安時代の歌壇において今も色あせることなく、文学や歴史の重要な一ページを占めています。

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