倭文神社 (湯梨浜町)

倭文神社（しとりじんじゃ/しずりじんじゃ）

鳥取県東伯郡湯梨浜町宮内にある倭文神社は、古くから信仰を集める神社です。式内社であり、かつては伯耆国一宮として栄えました。現在は神社本庁の別表神社となっています。境内には経塚があり、そこから出土した品々は国宝に指定されています。

祭神

倭文神社の主祭神は、機織りの神である建葉槌命です。また、以下の神々も合わせて祀られています。

下照姫命
建御名方命
天稚彦命
事代主命
少彦名命
味耜高彦根命

歴史

倭文神社の起源は、機織りに携わっていた倭文氏が、祖神である建葉槌命を祀ったことによるとされています。しかし、社伝には下照姫命に関する記述が多く、大正時代までは下照姫命が主祭神であると考えられていました。社伝によると、下照姫命は出雲からこの地に渡り、現在の場所に鎮まったとされています。その際、下照姫命が化粧をしたとされる「化粧水」や、腰を掛けたという「お腰掛岩」が今も残っています。

『式内社調査報告』では、元々は建葉槌命を祀っていたが、この地で織物が作られなくなったことで、建葉槌命の存在が忘れられ、共に祀られていた下照姫命だけが残ったと考察しています。

境内の塚は、かつて下照姫命の墓と考えられていましたが、1915年の発掘調査により経塚であることが判明しました。この発掘で、平安時代後期には、倭文神社が伯耆国一宮であったことが明らかになりました。この時に出土した観音菩薩立像などは、「伯耆一宮経塚出土品」として国宝に指定されています。

戦国時代には、地元の武将によって社領が没収され荒廃しましたが、1554年に尼子氏によって社殿が再建されました。また、南条氏からも寄進を受け、その後、池田氏も崇敬し、鳥取藩主の祈願所となりました。1939年には国幣小社に列格し、第二次世界大戦後は別表神社となりました。

かつて主祭神であった下照姫命が女神であることから、安産にご利益があるとされています。本殿の後ろには、かつて「乳神」と呼ばれた神木がありましたが、現在は倒壊しています。参道沿いには「安産岩」と呼ばれる岩があり、難産に苦しむ女性がこの岩に願掛けをしたところ、安産となったという伝説が残っています。この岩を削って飲むと霊験があるとされています。

創建年代

具体的な創建年代は不明ですが、808年の医学書『大同類聚方』に「川村郡倭文神主之家所傳方　原者下照姫神方也　中暑小便止　頭痛煩熱　口乾者與之」という記述があり、これが文献上の初見とされています。

文化財

国宝

伯耆一宮経塚出土品

1915年に、社殿の南南東約180メートルの場所にある経塚から出土した一括遺物です。これらの出土品は東京国立博物館に寄託されています。

銅経筒：円筒形で、銘文が刻まれています。1103年に僧の京尊が埋納したものであることがわかります。
金銅観音菩薩立像：奈良時代に作られたとされています。
銅造千手観音菩薩立像
銅板線刻弥勒立像
銅鏡 2面
桧扇残片 一括
短刀刀子残闕 一括
瑠璃玉 一括
銅銭 2枚
漆器残片 一括

この出土品は、1920年に古社寺保存法に基づく旧国宝に指定され、1953年に改めて国宝に指定されました。

国の史跡

伯耆一宮経塚

1935年に国の史跡に指定されました。

現地情報

所在地

鳥取県東伯郡湯梨浜町大字宮内754

交通アクセス

鉄道：JR山陰本線 松崎駅から徒歩約35分

脚注

安津素彦・梅田義彦編集兼監修者『神道辞典』（神社新報社、1968年）32頁
* 白井永二・土岐昌訓編集『神社辞典』（東京堂出版、1979年）166頁

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