偽ドミトリー3世

偽ドミトリー3世について

偽ドミトリー3世（にせドミトリーさんせい）は、ロシア史の中で非常に特異な存在であり、動乱時代に名乗られたツァーリ僭称者の一人です。彼は公式には1612年まで存在していたとされ、その実名や出自には多くの不明瞭な点があります。多くの歴史的文献によると、彼はシドルカという名の助祭出身であり、イヴァン4世の末子ドミトリー皇子を名乗って現れました。この時代のロシアは、様々な勢力が混在し、政治的不安定な状況が続いていました。

偽ドミトリー3世は、ナルヴァ川の西側から突如として姿を現し、1611年3月28日、イングリア地方のイヴァンゴロドでドミトリー皇子であると主張しました。その後、モスクワ近郊で活動していたコサックたちによってツァーリとして推戴されたものの、彼の権力基盤は非常に脆いものでした。コサックたちの支持を受けたプスコフの指導層は、彼に忠誠を誓いました。このため、彼はしばしば「プスコフの悪党」と呼ばれるようになりました。

しかし、彼の人生はその後急転直下の展開を迎えました。1612年5月18日、彼はプスコフを脱出したものの、追手に捕まり、モスクワ当局に引き渡されます。会えることなく彼は処刑され、その短い政治的キャリアは幕を下ろしました。

このように、偽ドミトリー3世は、名乗る皇子としての地位を得たものの、その出自や人物像がほとんど不明という、異彩を放つツァーリ僭称者でした。彼の存在は、動乱時代の混沌とした歴史の一部を物語っており、ロシア史の研究においても重要なテーマの一つとなっています。

この時代、ロシアでは多くのリーダーが現れ、消えていきました。同じく偽名を名乗った者たち、すなわち偽ドミトリー1世や2世、さらには4世なども存在し、それぞれが異なる時期に権力を奪おうとしました。歴史家たちは、これらの偽ドミトリーたちがそれぞれの背景に持つ理念や支持基盤について考察し、彼らの名が今もなお記憶に残る理由を探ります。

偽ドミトリー3世の短命な統治は、動乱時代における個々の権力の脆さや、人々の信頼を集めることの難しさを浮き彫りにしています。この時代のロシアは、外的および内的な争乱の中で、どのようにして新たな秩序を見いだしていくのか、その過渡期でもありました。彼の存在は、ロシアの歴史においても一つの興味深いテーマであるといえるでしょう。

もう一度検索