傘岩

傘岩（かさいいわ）

岐阜県恵那市大井町に位置する傘岩は、驚くべき自然の造形美を示す国の天然記念物です。この奇岩は、千年以上の年月をかけて風雨にさらされ、風食作用によってその姿を形成してきました。日本国内においても数少ない風食作用による自然の遺物であり、その特異な地質学的特徴が評価されて、1934年に国の天然記念物に指定されました。

風化と傘岩の形成

岐阜県の東濃地方、一帯には粗粒の花崗岩（ことに黒雲母花崗岩）が広がっており、恵那峡という美しい渓谷はこの花崗岩が侵食されることによって形成されました。傘岩は恵那峡の左岸、標高約300メートルの位置にあり、その周囲の地質と同じく花崗岩でできています。これらの岩石は、風化の影響を受けやすい性質を持ち、特に地表に近い部分が脆くなるのが特徴です。

岐阜県内の他の作品、たとえば鬼岩や御岳昇仙峡、寝覚の床などもこの花崗岩の風化作用によって生まれた巨岩です。傘岩もこの例に漏れず、風化によって形作られた不規則な形状を持っています。特に傘岩は、上部が硬く、下部が柔らかい岩体によって構成されており、長い時間をかけて柔らかい部分が削られ、このユニークなフォルムが形成されました。

傘岩の独特な形状

傘岩の外観は、傘というよりもキノコや扇子のような形をしています。高さは約4.3メートル、頂部の直径は3.3メートル、周囲は約10.2メートルです。一方で、細くなった柄の部分の周囲はわずか2.3メートル、基部は約5.1メートルです。この独特な形状は、幕の内側である円柱状の岩塊が残った結果、形成されたものであり、頂上部の硬い部分が、風食によって時間とともに削り取られ、現在の姿になりました。

また、傘岩は今後も風化が進むと予測されています。特に、細い部分が引き続き削られることで、将来的には重心を失い、崩れる可能性もあると言われています。

地質的背景

恵那峡周辺には、国の史跡である苗木城があり、ここでも花崗岩の巨岩が露出しているのが確認できます。岩の採石場でも、上部は風化が進み脆弱になり、下部は硬いまま残っているという現象が見られます。また、近隣の桃山公園にある女夫岩も、同じような理由で残された花崗岩です。

交通アクセス

傘岩を訪れるには、まずJR東海中央本線か明知鉄道の恵那駅に足を運び、その後恵那駅前バス乗り場から東濃鉄道バスでおよそ15分、恵那峡公園前バス停で降りるとすぐに到着します。また、中央道恵那ICから車で約10分の距離にあります。

地域の天然記念物としての傘岩は、自然の形成過程を語りかける貴重な存在であり、多くの人々が訪れる景観スポットになっています。周辺の風景も含め、訪れる価値がある場所と言えるでしょう。

もう一度検索