寝覚の床

寝覚の床とは

寝覚の床（ねざめのとこ）は、長野県木曽郡上松町に位置する、木曽川の清流が花崗岩を侵食して作り出した自然の芸術です。その独特な景観から、日本五大名峡の一つに数えられ、国の名勝にも指定されています。この地は、古くから多くの旅人を魅了し、歌人たちによって数々の歌にも詠まれてきました。長野県民歌「信濃の国」にもその名が登場し、歴史と文化を感じさせる場所でもあります。

地形の成り立ち

寝覚の床は、木曽川の流れが長い年月をかけて花崗岩を削り、形成されました。かつては急流だった木曽川も、上流に木曽ダムが建設されたことで水位が低下し、水面下にあった花崗岩が姿を現すようになりました。この結果、独特の岩盤が露出し、自然の造形美を見せています。また、水質改善のための放流が行われた結果、木曽川には再び清流が蘇り、水面は美しいエメラルドグリーンに輝いています。この美しい流れにはアユも放流され、景観だけでなく、生態系も豊かになりました。

歴史と伝説

寝覚の床には、浦島太郎伝説や三返りの翁の伝承が残っています。

浦島太郎伝説:
浦島太郎が竜宮城から帰った後、この地で暮らしたという伝説があります。玉手箱を開けてしまったという話は有名ですが、この地で釣りを楽しんだり、霊薬を売ったりして暮らしていたとも語り継がれています。また、「寝覚の床」という名前の由来についても、浦島太郎がまるで夢から覚めたように感じたことに由来するという説もあります。

三返りの翁:
寝覚の里には、長寿の薬を人々に分け与えたという伝説上の人物「三返りの翁」が住んでいたとされています。謡曲『寝覚』では、この翁が医王仏の権現であり、その秘薬を天皇に献上したとされています。翁が3度若返ったために「三返りの翁」と呼ばれるようになったとも語られています。

これらの伝説は、寝覚の床が古くから人々の想像力をかき立ててきたことを示しています。

周辺環境と観光

寝覚の床周辺は公園として整備されており、観光客が自然を満喫できるようになっています。また、JR中央本線の車窓からもその美しい景観を一望でき、特急「しなの」では、車掌のアナウンスや列車の速度を落として景色を楽しめるよう配慮されています。周囲には、木曽川や国道19号、木曽路美術館、寝覚ノ床美術公園などがあり、観光スポットとしても魅力的です。

地質

寝覚の床の地質は、中生界の粗粒黒雲母花崗岩で構成されています。岩盤には方状節理が見られ、各段の高さと幅は数メートル程度です。最上段は現河床からの比高が約20mで、約1.2万年前に露出したとされています。平均侵食速度は1.7m/kyrです。

アクセス

寝覚の床へは、自動車、鉄道の両方でアクセスできます。

自動車の場合:
長野自動車道塩尻IC、中央自動車道中津川IC、中央自動車道伊那ICから国道19号を経由してアクセスできます。周辺には駐車場も整備されています。

鉄道の場合:
JR中央本線上松駅、または木曽福島駅からバスやタクシーを利用してアクセスできます。

その他

寝覚の床の景観は、ダム建設時に問題となりましたが、関西電力との間で一時補償がなされ、景観保存への努力が続けられています。

まとめ

寝覚の床は、自然の造形美、歴史、伝説が融合した魅力的な場所です。木曽川の清流と奇岩が織りなす美しい景観は、訪れる人々に感動を与え続けています。

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