苗木城

苗木城について

苗木城（なえぎじょう）は、岐阜県中津川市苗木に所在する日本の城です。別名を霞ヶ城ともいい、かつては苗木藩の藩庁が置かれていました。現在では、その歴史的価値から国の史跡に指定されています。

概要

苗木城の城域は、内郭部分だけで約2万㎡、外郭を含めると約35万㎡にも及びます。このうち、156,774㎡が1981年に国の史跡として指定されました。城跡は、中津川市内を東西に流れる木曽川の北岸にそびえる城山（標高432m）に位置しており、木曽川からの標高差は約170mに達します。この自然の岩山の地形を巧みに利用して築かれた山城であることが大きな特徴です。

苗木城の特筆すべき点として、岩山という地形的な制約から平坦な土地の確保が難しく、そのため巨岩などを利用した懸造（かけづくり）という建築方法が用いられたことが挙げられます。また、石垣には多種多様な積み方が見られる点も特徴的です。

歴史的背景

築城の背景

苗木城の歴史は、鎌倉時代初期に岩村城を拠点に恵那郡を統治した遠山氏に遡ります。初代遠山景朝の長男である遠山景村が、1242年に木曽川北部の所領を確立するため、木曽川南岸から北岸の那木津戸（現在の苗木）に進出したことが、その始まりとされています。

その後、1331年から1334年頃には、遠山一雲入道とその子である遠山景長が、高森山（現在の中津川市苗木町）に砦を築きました。また、1334年から1336年頃には、遠山景利が広恵寺城を築き、宗良親王を迎えています。

1473年には、小笠原家長と木曾家豊が東濃へ侵攻。1524年には、小笠原定基の家臣である高柴景長が神明神社を造営しました。1526年には、遠山一雲入道昌利が館を高森山に移し、苗木城の前身となる拠点を築きました。

戦国時代の苗木城

1534年に松尾小笠原氏が武田氏に敗れ、小笠原氏が撤退。1552年には、遠山景安が笠木社に梵鐘を寄進しました。1552年、岩村遠山氏の遠山直廉（正廉）が苗木遠山氏の養子となり、阿寺城を築いた後、高森山砦を拡張して苗木城主となりました。この時期に、遠山正廉によって苗木城が築かれたと考えられています。

1555年には木曽氏が武田氏に降伏。1560年には、苗木勘太郎（遠山直廉と同一人物説あり）が桶狭間の戦いに出陣しました。1565年には、苗木勘太郎の娘が武田勝頼（武田信玄の次男）に嫁ぎ、武田家との関係が深まりました。

1569年、遠山直廉は武田氏の指示で飛騨国益田郡竹原へ侵攻し、三木氏との戦いで勝利しましたが、自身も矢傷を負いました。同年、広恵寺に禁制を下し、その後、遠山直廉（雲嶽宗高大禅定門）は1570年に亡くなりました。その後、織田信長の命令により、飯羽間遠山氏の遠山友勝が苗木遠山氏を相続しました。

織田氏、武田氏、森氏による攻防

1570年の上村合戦では、遠山友勝らが武田家臣の秋山虎繁と戦いました。1573年、木曾義昌が苗木を攻めます。1574年には、武田勝頼が東美濃に侵攻し、高山城と苗木城を落としました。

1575年、織田信忠が岩村城を奪還し、東濃の諸城も取り戻しました。1582年には、森長可が苗木を攻めました。1583年には再び森長可に攻められ、苗木城は落城。遠山友忠・友政親子は徳川家康を頼り浜松へ逃れました。

安土桃山時代から明治時代へ

1599年、森氏が信濃川中島に移封され、河尻直次が苗木城主となります。1600年、遠山友政が徳川家康の命を受け苗木城を攻略し、苗木領を安堵され苗木藩が成立しました。

1869年、苗木藩主の遠山友詳が版籍奉還により藩知事となり、1871年の廃藩置県により苗木藩は廃藩、苗木県となりました。1884年、遠山友詳は子爵となりました。1981年、苗木城跡は国の史跡に指定。2017年には、続日本100名城に選定されました。

遺構

現在、本丸、二の丸、三の丸などの石垣や、大矢倉跡、風吹門跡、綿倉門などの門跡、堀が残っています。天守台や大矢倉の石垣、馬洗岩など、巨大な自然石が複数箇所で利用されているのが特徴です。菱櫓台の下には千石井戸と呼ばれる井戸が残っています。大手口道は全長500m、高低差150mあり、「四十八曲り道」と呼ばれています。

建築物としては、大手門の扉と柱が現存しており、中津川市苗木遠山史料館にて展示されています。

伝説

苗木城は「赤壁城」とも呼ばれており、その壁は白漆喰ではなく赤土がむき出しになっていたと伝えられています。この理由については、木曽川に住む竜が白い色を嫌い、何度漆喰を塗り直しても嵐を起こしてはぎ取ってしまったという伝説が残っています。しかし実際には、苗木藩の財政状況が厳しく、漆喰を塗る経費を捻出できなかったためであるという説もあります。

城下町

城山の北麓には城下町が広がっていました。濃陽徇行記には、「町屋四町ほど続き、北より入り又東へ曲がり上町、下町という。東の町はづれに城門あり」と記述されています。苗木城の武士の住居は、城域内外に点在しており、城下への強制的な移住策は取られていなかったと考えられます。

町は、上町、新町、下モ丁、鉄砲町に分かれており、士族屋敷が混在していました。上町は、元禄の頃には町屋が九軒でしたが、徐々に発展し新町、本町、柳町へと広がりました。新町は、火災を機に広小路となり、後に本町と改称。鉄砲町は足軽が住んでいましたが、年月を経て町屋となりました。柳町は、織屋が建てられたことで命名されました。

武士は、町屋への自由な出入りは許可されておらず、買い物などの用事のみ許可されていました。また、城下町での芝居興行や村々での芝居見物は禁じられていましたが、遠山家奥方が見物する場合は、武士やその家族も許可されていたそうです。

関連画像

[苗木城の画像1]
[苗木城の画像2]
[苗木城の画像3]
[苗木城の画像4]

脚注

[参考文献リスト]

関連項目

苗木遠山氏
日本の城一覧
日本の史跡一覧

外部リンク

苗木遠山史料館
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