備前国分寺跡

備前国分寺跡

岡山県赤磐市馬屋に位置する備前国分寺跡は、奈良時代に聖武天皇の詔によって日本各地に建立された国分寺のうち、備前国国分僧寺の跡です。この地には、僧寺だけでなく、国分尼寺の跡も存在します。

概要

備前国分寺跡は、赤磐市南西部の扇状地斜面に位置しています。古代の山陽道が寺域の南方を通り、交通の要所であったことが伺えます。現在、寺域西辺中央には国分寺八幡宮が鎮座し、東方には両宮山古墳が、南方には国分尼寺跡が、南西には備前国庁跡があります。1974年の確認調査を経て、1975年に国の史跡に指定されました。2003年からは発掘調査が行われ、伽藍の一部が整備されています。

歴史

古代

創建時期は不明ですが、天平13年（741年）の国分寺建立の詔の頃と考えられています。『延喜式』には、備前国の国分寺料として稲4万束が当てられていた記録があります。考古学的には、平安時代中期から後期にかけて改修が行われた後、平安時代末頃には講堂や北側回廊が焼失し、金堂や塔も機能を失ったと推測されています。

中世

中世期の詳しい変遷は不明ですが、鎌倉時代前半には講堂東北部に堂宇が再建されています。また、鎌倉時代後期には、塔跡に石造七重層塔が建てられました。

近世

16世紀後半から17世紀初頭には、再建された堂宇も廃絶し、寺院としての機能は完全に失われたと考えられています。江戸時代には、円寿院が備前国分寺の法燈を継承する寺院とみなされていました。また、土肥経平の『寸簸之塵』や松本亮の『東備郡村誌』にも、備前国分寺に関する記述が見られます。

近代以降

戦前には、永山卯三郎、荒木誠一、玉井伊三郎らが備前国分寺跡について記述しました。1974年の緊急発掘調査で国分寺跡であることが確認され、1975年に国の史跡に指定されました。その後も発掘調査や史跡整備が進められ、2010年には塔跡地区、2016年には講堂跡地区の整備が完了しました。

伽藍

備前国分寺の伽藍は、東西175メートル、南北190メートルの築地塀で囲まれた寺域に、南から南門、中門、金堂、講堂、僧房が一直線に配置され、東南隅に塔が配置される東大寺式伽藍配置（国分寺式伽藍配置）です。講堂左右からは回廊が伸びて中門左右に取り付き、金堂がその回廊に囲まれるという特徴的な形式です。

金堂

本尊を安置する建物で、基壇は東西約34.45メートル、南北約21.98メートル。建物は桁行7間、梁間4間。創建期の金堂は平安時代中期に倒壊し、平安時代後期に改修または再建されたとみられます。

塔

経典を納める建物。基壇は一辺約17.82メートル。礎石は心礎のみが現存します。平安時代中期頃に廃絶し、鎌倉時代には心礎上に石塔（石造七重層塔）が建てられました。

講堂

経典の講義を行う建物で、金堂の北方に位置します。基壇は東西約37.72メートル、南北約20.79メートル。建物は桁行7間、梁間4間。創建期の講堂は12世紀半ばから後半頃に焼失し、鎌倉時代前半に再建されました。

中門

金堂の南方に位置し、左右には回廊が取り付きます。基壇は東西約21.68メートル、南北約10.69メートル。建物は桁行5間、梁間2間と推定されています。

南門

中門の南方に位置し、中門と近接します。基壇は東西約23.17メートル、南北約12.47メートル。建物は桁行5間、梁間2間と推定され、中門よりも大規模な門であったと考えられています。

僧房

僧の宿舎。講堂の北方に位置します。建物は桁行25間、梁間2間と推測されています。

回廊

講堂と中門を結ぶ屋根付きの廊下。複廊式回廊が採用されています。

寺域からは、瓦のほか、銅印、泥塔、三彩、土器片などが出土しています。

備前国分尼寺跡

備前国分尼寺跡は、僧寺跡から古代山陽道を挟んで南約300メートルに位置します。推定寺域は135メートル四方で、現在は溜池や農地となっています。詳しい調査は行われていませんが、僧寺と同様の瓦が出土しており、かつては礎石と見られる岩が点在していたといいます。

文化財

国の史跡
備前国分寺跡
赤磐市指定文化財
石造七重層塔

現地情報

所在地
国分僧寺跡：岡山県赤磐市馬屋
国分尼寺跡：岡山県赤磐市馬屋・穂崎
交通アクセス
バス：宇野バス「新道 穂崎下」バス停下車、徒歩約10分
関連施設
赤磐市山陽郷土資料館

周辺

両宮山古墳群
両宮山古墳
大廻小廻山城跡

備前国分寺跡は、古代の歴史を感じられる貴重な史跡です。発掘調査や整備によって、その姿が少しずつ明らかになってきています。訪れる際には、周辺の文化財と合わせて、古代の息吹を感じてみてください。

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