優勝内国産馬連合競走

優勝内国産馬連合競走：日本競馬史における重要な競走

概要

優勝内国産馬連合競走は、1911年（明治44年）から1937年（昭和12年）まで開催された、当時の日本競馬最高賞金額を誇る競走です。3200メートル（約2マイル）という距離から「連合二哩」や「連合競走」などと呼ばれ、現在の天皇賞の起源の一つとされています。各地競馬倶楽部のチャンピオン馬のみが出走できる、いわば「日本一の名馬決定戦」として、大きな人気を博しました。東京優駿大競走（日本ダービー）の前身とも評されています。

歴史的背景：国策競馬と馬券禁止

明治後期の競馬は、「軍馬改良」を大義名分として盛んに行われていました。しかし、日清・日露戦争での日本馬の劣勢が露呈したことから、1906年（明治39年）、明治天皇の勅令により馬政局が設置され、馬産振興が国策として推進されることになります。この頃、各地に競馬倶楽部が急増する一方、運営上の不正や営利主義が横行し、社会問題化しました。

当時、馬券販売は法的に根拠がありませんでしたが、政府は黙認していました。しかし、1908年（明治41年）、第2次桂内閣の岡部長職司法大臣が馬券反対の立場から強硬策をとり、馬券販売を禁止しました。国会では馬券合法化の動きもありましたが、貴族院で廃案となり、馬券は長らく禁止されたままとなります。

創設：競馬不況と連合競走の誕生

馬券禁止により、各地の競馬倶楽部は経営難に陥りました。賞金原資である馬券売上がなくなったため、競走への出走頭数は激減、多くの競走が1頭だけの単走状態となりました。軍馬改良という競馬開催の目的が阻害される事態を受け、馬政局は競馬に補助金を出し、その資金で1911年（明治44年）秋、優勝内国産馬連合競走が創設されました。

競走の成立：日本一の名馬決定戦

東京競馬場（目黒競馬場）で開催された優勝内国産馬連合競走は、1着賞金3000円という破格の賞金で、当時の最高額でした。この競走に出走できるのは、前季の新馬戦で上位入賞した内国産馬に限られていました。日本各地のチャンピオン馬が集結し、「日本一の名馬決定戦」として注目を集め、優勝馬は全国的な名声を得ました。特に、小岩井農場の生産馬が5連覇を達成するなど、大きな話題を呼びました。

競走の拡大：春秋開催・東西開催

創設当初は秋のみの開催でしたが、1918年（大正7年）からは春秋2回開催となり、出走条件も見直されました。1928年（昭和3年）にはメートル法導入に伴い距離が3200メートルに改められ、競走名も変更されました。1923年（大正12年）の競馬法成立で馬券が復活すると、1924年（大正13年）には阪神競馬倶楽部でも「関西連合」と呼ばれる同様の競走が創設され、東西のチャンピオン決定戦となりました。さらに、京都競馬場では牝馬限定の連合競走も開催されました。

終局：帝室御賞典への統合

戦時体制の強化に伴い、各地の競馬倶楽部は統合され日本競馬会が誕生しました。全国的な競走体系の再構築において、優勝内国産馬連合競走は、3200メートル、高額賞金競走である「帝室御賞典」として継承されることになります。この帝室御賞典は、距離や施行条件などは連合競走を踏襲しつつ、皇室からの賞品下賜という新たな特徴を加えたものでした。

結論

優勝内国産馬連合競走は、馬券禁止、軍馬改良政策、そして競馬界の変遷という歴史的背景の中で誕生し、発展しました。その存在は、現在の日本競馬の礎を築いた重要な競走であると言えるでしょう。 この競走は、日本の競馬史において、その後の競走体系や天皇賞の礎を築いた重要な役割を果たしました。また、その歴史は、社会情勢や競馬を取り巻く環境の変化を反映しており、日本の近代競馬史を理解する上で重要な資料となっています。

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