元好問

元好問（げん こうもん）

元好問（1190年 - 1257年）は、金朝末期の詩人であり、字は裕之、号は遺山と称しました。彼は、北魏の皇族を祖先に持ち、唐代の詩人・元結を遠祖とする家系に生まれました。

生涯

若年期

元好問は、1190年に忻州秀容県（現在の山西省忻州市忻府区）で生まれました。幼少期から詩作の才能を発揮し、神童と称されました。14歳で郝天挺に師事し、科挙の勉強よりも諸子百家の思想や人間の本質について学びました。隠遁生活への憧れを抱きながらも、20歳前に結婚し、長女をもうけました。

金への仕官

1211年、モンゴル軍が金に侵入し、1214年には兄が戦死しました。元好問は母とともに河南に疎開しましたが、戦禍に巻き込まれます。混乱が落ち着くと、進士の受験勉強に励み、文学論を著して文壇から高い評価を得ました。1218年に登封に移住し、農民とともに農作業に従事しながら、農民への愛着と悪徳官吏への批判を詩に込めました。

1221年に進士に合格しますが、すぐに任官とはならず、1225年に国史院編修に配属されます。しかし半年後には辞職し、河南の鎮平県令、内郷県令、南陽県令を歴任しました。県令として、徴税の職務と困窮する農民の矛盾に苦悩し、その心情を詩に表現しました。

1231年に中央に召還され、1232年に尚書省の左司都事に抜擢されました。しかし、1233年に皇帝がモンゴル軍から逃亡し、クーデターが起こると、元好問は殺害されかけますが、李仲華の取り成しで難を逃れます。その後、左右司員外郎に任命されますが、崔立の碑文を建てることを強要され、不本意ながらも従いました。

亡国の臣として

1234年に開封が陥落し、元好問は捕虜として聊城県内の寺に抑留されました。彼はモンゴルの官僚に手紙を書き、金の知識人の保護と伝統文化の維持を訴えました。金が完全に滅亡すると、崔立の死を喜び、哀宗への哀悼と金への忠誠を詩に表しました。その後、釈放され、冠氏県に移住し、趙天錫と厳実の保護を受けながら、著作に専念しました。

モンゴルに仕官することなく、滅亡した祖国・金の歴史編纂事業に全力を尽くしました。1240年に故郷に戻りますが、史書編纂のために各地を遍歴し、道中で見たモンゴルの習俗や窮乏する民衆の様子を詩に書き残しました。1252年、クビライと謁見し、「儒教大宗師」の尊号を奉じました。1257年に真定路の獲鹿県にて68歳で死去しました。

評価

元好問は、金朝滅亡後の中国において、長らく正当な評価を受けてきませんでした。しかし、清朝時代になってから再評価が進み、彼の作品や事績が研究されるようになりました。彼の作品は、戦乱の時代における人々の苦しみや、故国への深い哀惜の念を表現しており、後世に大きな影響を与えました。

代表的な著作

中州集
中州楽府
壬辰雑編
杜詩学

『中州集』は、彼の傑作として知られており、金朝の詩人の作品を集めたものです。この詩集は、詩人の伝記も収録しており、金朝史の資料としても重要な役割を果たしています。

元好問の作品は、日本の南北朝時代から五山の僧の間で読まれていました。江戸時代には出版され、明治時代に入ってから関心が高まりました。

元好問は、金朝末期の動乱期を生きた詩人であり、その作品は戦乱と社会の変化を背景に、深い人間性と故国への哀惜を込めています。彼の詩は、後世に大きな影響を与え、金朝の文化を伝える貴重な資料となっています。

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