元田永孚

元田永孚：明治天皇を導いた儒[[学者]]

元田永孚（もとだ ながざね、1818-1891）は、明治時代の日本の武士、熊本藩士、そして儒[[学者]]として知られています。男爵の称号も授与されました。幼名は大吉、通称は伝之丞や八右衛門、雅号は東野、字は子中、号は東皐や樵翁など、数多くの名前を持っていました。

熊本藩士時代から宮廷へ

1818年、熊本藩士の家に生まれた永孚は、幼少期から祖父のもとで厳しい儒学教育を受けました。11歳で藩校時習館に入り、横井小楠や下津休也らと交流し、藩政改革を目指す実学党の一員として活動します。しかし、実学党の分裂や藩内情勢の変化を経て、一旦は在野に身を置きました。

その後、家督を継ぎ、藩主の側近として仕え、京都留守居などを務めながら、政治の舞台に携わりました。第一次長州征討には従軍しましたが、第二次長州征討には反対するなど、独自の政治的立場を保ちました。

明治維新後、一時隠退して私塾を開きましたが、後に藩主の侍読として復帰。明治4年（1871年）には、藩命により上京し、宣教使や参事を務め、さらに大久保利通の推挙により宮内省に出仕しました。そして、明治8年（1875年）1月には、明治天皇の侍読に任命され、20年以上にわたって天皇への進講を行うことになります。

天皇親政運動と教育

侍読として、永孚は天皇に儒教に基づいた教育を行い、君徳の涵養に尽力しました。文明開化を批判的に捉え、天皇中心の政治体制を主張し、親政運動を推進しました。大久保利通暗殺後には、天皇に親政の実行を直訴するなど、積極的に政治改革に働きかけました。

しかし、政府の抵抗にあい、親政運動は挫折。その後も、天皇中心の国家を教育によって実現しようと、国民の忠誠心を高めるための教育方法を模索し、『教学聖旨』や『幼学綱要』などを著しました。これらの著作は、政府によって却下されたり、破棄されたりしましたが、彼の教育への情熱を示すものです。

国家教育への貢献

宮中顧問官、枢密顧問官などを歴任し、天皇からの信頼は厚く、条約改正問題など、重要な国家的事柄においてしばしば意見を求められました。また、『教育勅語』の起草にも参加するなど、儒教に基づいた天皇制国家思想の確立に大きく貢献しました。

永孚は、西洋的な啓蒙主義を批判し、儒教道徳を重視。皇室を中心とした伝統に基づく国民教化を強く主張しました。彼の思想は、教育勅語に反映され、明治日本の国家形成に大きな影響を与えました。一方で、彼の思想は、国家の理性を軽んじるものとして批判されることもありました。

晩年と死後

晩年は、天皇の信頼は変わらずとも、政府の政策に影響力を持つことは難しくなりました。明治24年（1891年）、72歳で死去。従二位・男爵を贈位されました。彼の死後も、その思想は日本の教育や政治に影響を与え続け、現在まで語り継がれています。彼の功績は、明治天皇の教育を通して日本の近代国家建設に貢献した点にあります。また、儒教思想を国家の礎とする彼の試みは、現代においても研究の対象となっています。

著作

永孚は数多くの著作を残しており、それらは彼の思想や教育観を理解する上で重要な資料となっています。主な著作としては、『幼学綱要』『教学聖旨』などが挙げられます。これらの著作は、後世の教育や思想に大きな影響を与えました。

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