元稲荷古墳

元稲荷古墳について

元稲荷古墳（もといなりこふん）は、京都府向日市向日町北山に所在する古墳で、向日丘陵古墳群の一部として知られています。ここは国の史跡に指定されており、特に「乙訓古墳群」として重要な位置を占めています。

概要

京都盆地の南西部に広がる向日丘陵の最南端に位置しており、この古墳は大型の前方後方墳として知られています。元稲荷の名称は、かつて後方部の頂にある稲荷社に由来しています。周辺には同様の前方後円墳が点在し、これらと共に古墳群を形成しています。

古墳はこれまで長い間の盗掘にさらされており、1960年代からは多くの発掘調査が行われてきました。墳形は前方後方型で、南北に延び、特に前方部分は南側を向いています。墳丘は後方部が3段、前方部が2段に築成され、表面には葺石が敷かれていますが、埴輪は存在していないことから古い形式を持っていると考えられています。

埋葬施設は竪穴式石室で、後方部の中央に設置されていますが、この石室も盗掘に遭い、貴重な副葬品が失われています。調査の結果、前方部中央では複数の埴輪片や壺形土器が発見され、特異な器台形の埴輪片も確認されています。

建設時期と特徴

元稲荷古墳の築造時期は古墳時代前期の3世紀後半と推定され、同じ時期の古墳の中でも特に西求女塚古墳（兵庫県神戸市）とよく似た形状を持っています。これは向日丘陵の首長墓群の中でも築造の時期が近く、五塚原古墳と同様の重要性を持ちながら、ヤマト王権との関係に関しては微妙な差異が見られます。

歴史的な背景を考えると、元稲荷古墳は当時の大王墓である箸墓古墳や西殿塚古墳との繋がりが指摘されており、これらをモデルに墳丘が造営されたと見られています。

発掘調査の歴史

元稲荷古墳は1919年に梅原末治により確認され、その後1960年から2012年にかけて大規模な発掘調査が実施されています。これらの調査により、墳丘の詳細な測量や埋葬施設の調査が行われ、古墳の構造が明らかになりました。

2016年には、元稲荷古墳が国の史跡に正式に指定され、乙訓古墳群におけるその価値が再認識されました。古墳自体は、周囲の環境と共に歴史的な価値を現在に伝える貴重な遺跡です。

文化財としての位置づけ

元稲荷古墳を通じて、古墳時代の文化や当時の社会構造が伺えます。特に、出土品の中には日常的に使用されていたと思われる器具や武器が含まれ、当時の人々の生活を垣間見ることができます。これらの遺物は、今後の研究や教育の場において重要な示唆をもたらすことでしょう。

また、京都大学総合博物館では、関連する出土品を保管・展示しており、さらなる探索や理解を促進しています。元稲荷古墳は、古代日本の歴史を紐解く鍵を握る重要な文化遺産であり、後世にその価値を伝えていく必要があります。

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