兄弟姉妹婚

兄弟姉妹婚とは

兄弟姉妹婚（きょうだいしまいこん）は、文字通り、兄弟姉妹の間で婚姻関係を結ぶことを指します。「きょうだい婚」や「キョウダイ婚」といった表記も見られます。現代の多くの国々では、近親婚の一種として法律により禁止されており、これは全血（同父母）であるか半血（同母異父または同父異母）であるかを問わず適用されるのが一般的です。

ただし、例外的なケースとして、スウェーデンでは異母または異父の場合に限り、政府の許可を得ることで兄弟姉妹間の結婚が認められることがあります。しかし、このような事例は国際的に見ても非常に稀です。

歴史に見る兄弟姉妹婚

西ユーラシア・北アフリカ

古代エジプトでは、全血の兄弟姉妹婚が広く行われていました。特にファラオをはじめとする王家で頻繁に見られましたが、これは王位継承の正統性を確保するため、あるいは古代エジプト社会の特殊な系譜観に関連していたとする説があります。中には、ツタンカーメン王が兄弟姉妹間の子供だった可能性を示唆する研究報告も存在します。王族だけでなく、一般市民の間でも兄弟姉妹婚は珍しくなく、紀元2世紀の記録では、婚姻全体の約20%を占めていたと指摘されています。

ユダヤ人の聖典『レビ記』は兄弟姉妹間の性関係を厳しく禁じていますが、伝承ではユダヤ人の祖とされるアブラハムが異母妹のサラと結婚していたと伝えられています。

古代ギリシアでは、兄弟姉妹婚に対し比較的柔軟な対応が見られました。半血の場合に限り、スパルタでは同母異父の、アテナイでは同父異母の関係での婚姻が認められていたとする記録があります。

東ユーラシア

現在の日本の民法では兄弟姉妹婚は禁止されていますが、古代においては異父同母間の婚姻は許容されていませんでした。しかし、同父異母兄弟姉妹間の婚姻は行われており、聖徳太子（用明天皇と同父異母の穴穂部間人皇女の子）や舒明天皇（押坂彦人大兄皇子と同父異母の糠手姫皇女の子）などがその例です。また、稀ではありますが、橘諸兄と藤原多比能のように同母異父の兄妹が結婚した事例も知られています。一方で、同父母の兄弟姉妹間の結婚は、古代から厳しく禁じられていたと考えられています。上代日本語で夫を「兄（せ）」、妻を「妹（いも）」と呼ぶ慣習がありましたが、これは夫婦と兄弟姉妹の関係性が同一視されていた可能性を示唆する見方もあります。

平安時代中期以降になると、同父異母の兄弟姉妹婚も次第に見られなくなりました。平安時代の物語『源氏物語』には、登場人物が異母姉弟と知って落胆したり、そうではないと知って積極的に行動したりする場面が描かれており、当時の社会における異母兄弟姉妹間の恋愛や婚姻に対する意識の変化がうかがえます。

東アジアでは、かつての朝鮮においても異母の兄弟姉妹婚が見られました。高麗時代の王族には、光宗と異母姉妹の大穆王后のように、異母兄弟姉妹で結婚した例が複数確認されています。

中国では、兄妹間の性交渉は伝統的に父権的な価値観から否定的に見られる傾向がありましたが、春秋時代の斉の襄公と文姜の異母兄妹の例など、古代には血族婚の風習があった可能性も指摘されています。

東南アジアでは、タイのラーマ5世が異母姉妹を含む多数の妻を迎えた例や、インカ帝国で代々の皇帝が同母姉妹と結婚する習わしがあったことなどが知られています。

遺伝的リスクと現代

近親婚は一般的に遺伝的なリスクを高めると指摘されますが、過去にはタイのラーマ5世のように、複数の配偶者を持つことで子孫の遺伝的多様性を確保し、リスクを軽減しようとしたと解釈できる事例も存在します。

現代においては、多くの国で兄弟姉妹婚は法律で禁止されていますが、スウェーデンでは前述のように、政府の許可を得ることを条件に半血の場合に認められる例外規定が存在します。これは、実際に発生した異父兄弟姉妹のカップルに関する問題が法改正の契機となったものです。また、近年でもスコットランドでの近親相姦事件に関連し、異父兄妹が結婚を望んだとする報道など、現代社会における論争や議論も存在します。

兄弟姉妹婚は、時代や文化、そして社会の構造によってその位置づけが大きく異なってきた複雑な歴史的背景を持つ慣習と言えるでしょう。

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