光岡・ラセード

光岡自動車 ラ・セード：日産シルビアをベースにした唯一無二のクラシック風クーペ

光岡自動車が製造販売していたラ・セードは、日産シルビアを大胆に改造したスペシャルティカーです。その魅力は、クラシックカーを思わせるスタイリッシュなデザインと、他にはない個性的な車体構造にあります。

独創的な車体構造

ラ・セードの最大の特徴は、シルビアのホイールベースを大幅に延長している点です。これは、シルビアのフロントアクスルとエンジン、そしてモノコックボディを、光岡自動車が独自に製作した延長フレームに搭載することで実現しました。具体的には、シルビアのモノコックボディをフロントストラットタワーの前とトランクフロアの後方で切断し、延長フレームに接合。リアアクスル付近までフロア補強を施すことで、強度と安定性を確保しています。

興味深いのは、エンジン、トランスミッション、リアアクスルの位置関係は、基本的にシルビアと同一に保たれている点です。そのため、ストレッチリムジンのようなプロペラシャフトの延長加工や強度計算は不要でした。ステアリングシャフトのみ、延長フレームの分だけ延長加工されています。

光岡自動車は当時、複雑なモノコックボディの強度計算に必要なコンピュータを保有していませんでした。そのため、独自に製作したフレームにシルビアのモノコックボディを「補強材」として組み込むという手法で、改造申請の承認を得ています。この技術的な工夫は、後の光岡自動車のオリジナルカー開発に大きく貢献しました。

デザインと装備

ラ・セードのデザインは、クラシックカーを彷彿とさせる美しいシルエットが特徴です。フロントフェンダーのスペアタイヤカバーやボンネット側面の6本のエキゾーストパイプは、いずれもダミーです。スペアタイヤカバー内にはバッテリーなどが収納されています。一方、フロントグリルに備え付けられた4つのホーンは、本物の警音器として機能します。

エンジンルームには、光岡自動車独自のメーカーズプレートではなく、日産のものがそのまま装着されています。これは、ラ・セードがシルビアの改造車という扱いであることを明確に示しています。

初代と2代目

ラ・セードは、大きく分けて初代と2代目の2世代が存在します。

初代（1990年-1993年）： S13型シルビアをベースに、FRP製の専用ボディを架装。CA18DE型1.8L直列4気筒DOHCエンジンと4速ATを搭載し、1990年に限定500台で発売されました。発売と同時に大きな話題となり、わずか4日間で完売。1993年までの製造期間中、シルビアのマイナーチェンジによるエンジン変更（SR20DE/T）はラ・セードには反映されませんでした。

2代目（2000年-2006年）： S15型シルビアをベースに開発されました。フロントガラス、ドア、ミラー、サイドガラス、ルーフの前半部分など、シルビアの原型を一部継承しています。SR20DE型2.0L直列4気筒DOHCエンジンと4速ATを搭載し、2000年11月15日に限定100台で発売。2004年には限定3台のファイナルモデルが発売され、その生産は終了しました。また、コンバーチブルタイプも東京モーターショーに出展されましたが、市販化には至りませんでした。

車名の由来

ラ・セードの車名は、「第二の人生・飽くなき夢を追い求め、自由を味わいながら長い人生を楽しむ」という意味の造語「Life Second Dream」に由来しています。

光岡自動車の技術と歴史

ラ・セードの開発を通じて培われた技術は、後の光岡自動車のオリジナルカー開発に大きく貢献しました。特に、ホイールベース延長技術やモノコックボディ改造技術は、ゼロワンやビュートなどの開発に生かされています。また、CMCティファニー・クラシックにインスパイアされたと言われるラ・セードは、光岡自動車の挑戦的な姿勢を示す一台と言えるでしょう。ラ・セードは、希少性と個性的なデザイン、そして光岡自動車の技術力の高さを示す、貴重な存在です。

もう一度検索