スペシャルティカー

スペシャルティカーとは

スペシャルティカーは、スポーツカーを彷彿とさせるスタイリングを持ちながら、実際には快適性や居住性を重視した自動車のカテゴリーです。走行性能を追求するのではなく、スタイリッシュな外観と快適な乗り心地を両立させることを目的としています。このため、多くの場合、大衆車のプラットフォームをベースに、クーペやハードトップといったスポーティなボディが架装されています。比較的安価にスポーツカーのような雰囲気を味わえる点が特徴で、かつては「デートカー」という愛称で親しまれました。

1970年代初頭から1990年代初頭にかけて、若者を中心に人気を集めましたが、2020年代現在では新車での販売はほとんどなく、中古車市場でその存在を確認できる程度となっています。

歴史

スペシャルティカーの先駆けとされるのは、1964年に登場したフォード・マスタングです。マスタングは、フォード・ファルコンのシャシーをベースに、スポーツカー風のクーペボディを載せ、多彩なオプションを用意したことで、幅広いユーザーに支持されました。この成功を受けて、ゼネラルモーターズ（GM）がシボレー・カマロ、クライスラーがダッジ・チャレンジャーを相次いで投入し、アメリカの自動車市場で一大ブームを巻き起こしました。当時、これらのロングノーズ・ショートデッキのクーペは、より高級なビュイック・リヴィエラやキャデラック・エルドラドなどと共に「スペシャルティカー」とカテゴライズされました。

日本では、1962年にプリンス自動車がスカイラインスポーツを発売しましたが、これは少量生産に留まりました。量産されたスペシャルティカーとしては、1970年に登場したトヨタ・セリカが最初期と言えるでしょう。セリカはカローラのコンポーネンツを一部流用しながらも、新設計のシャシーを採用し、人気を博しました。その後、マツダ・コスモAP、日産・シルビア、ホンダ・プレリュードなどが登場し、1980年代にはスペシャルティカー市場が大きく成長しました。また、セリカの姉妹車であるカリーナEDの登場は、4ドアスペシャルティカーという新たなジャンルを確立しました。

バブル期には、3代目ホンダ・プレリュード、S13型日産・シルビア、AE91/92型カローラレビン/スプリンタートレノなどが人気を集めました。しかし、その後、スペシャルティカーは高級化が進み、ハイソカーとの競合が激化しました。バブル崩壊後は、実用的な自動車が求められるようになり、スペシャルティカーの人気は衰退。コンパクトカーやSUV、ミニバンといったカテゴリーに人気がシフトしました。また、パフォーマンスカー市場ではホットハッチやスポーツセダンが台頭し、クーペの相対的な地位が低下していきました。これらの要因が複合的に影響し、スペシャルティカーの販売台数は減少の一途を辿りました。

代表的な車種

日本車

トヨタ：セリカ、コロナクーペ、カレン、セリカXX、スープラ、カローラレビン、スプリンタートレノ、セラ、サイノス
日産：シルビア、ガゼール、180SX、レパード（2代目まで）、エクサ、サニーRZ-1、NXクーペ、ルキノクーペ
ホンダ：Z（初代）、アコードクーペ、シビッククーペ、プレリュード、インテグラ
マツダ：コスモ、ルーチェロータリークーペ、エチュード、MX-6、ユーノス・プレッソ、オートザム・AZ-3
三菱自動車工業：ギャランGTO、ミニカスキッパー、ランサーセレステ、ギャランΛ、コルディア、スタリオン、エクリプス、FTO
富士重工業（現・SUBARU）：アルシオーネ、アルシオーネSVX、R1
スズキ：フロンテクーペ、セルボ（初代、2代目）
ダイハツ：フェローハードトップ、リーザ、MAX、ソニカ、キャスト
いすゞ：117クーペ、ピアッツァ、PAネロ

※軽自動車には☆印を付与

関連情報

クーペ
セダン
ハードトップ
スポーツカー
オープンカー
ハイソカー
クロスオーバーSUV

外部リンク

* 特集　スペシャリティカーの魅力を考える (JAMA 日本自動車工業会)

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