兒玉久子

兒玉久子の生涯

兒玉久子（こだま ひさこ）は、天保13年（1842年）に周防国都濃郡徳山（現在の山口県周南市）で生まれ、昭和12年（1937年）に95歳で亡くなりました。彼女は、幕末から昭和にかけての激動の時代を生き抜き、その生涯は、時代の波に翻弄されながらも、家族を支え、教育と信仰に生きた一人の女性の姿を映し出しています。

生い立ちと結婚

久子の父は、徳山藩（長州藩の支藩）の中級武士である児玉半九郎で、100石取りの武士でした。安政3年（1856年）に父が亡くなった時、弟の源太郎はまだ幼かったため、母の元子は、半九郎の養子となっていた浅見栄三郎の次男・次郎彦を久子の婿養子として迎え、児玉家の家督を相続させることになりました。次郎彦は徳山七士の一人として知られています。

夫の死と困窮

しかし、元治元年（1864年）に夫の次郎彦が佐幕派によって暗殺され、児玉家は家禄と宅地を没収され、家名も断絶となりました。久子は、母、妹の信子、弟の源太郎、そして夫との間に生まれた子・文太郎と共に、困窮した生活を送ることになります。遠縁を頼って雨露をしのぎ、母や妹と共に裁縫や機織りなどの賃仕事で生計を立てました。しかし、母の元子は、家名を辱めないように努め、久子や源太郎らの教育を怠らず、事あるごとに『曽我物語』を読み聞かせました。

家名の再興と晩年

やがて藩論が倒幕派に傾き、慶応元年（1865年）に児玉次郎彦に対する赦免状が交付され、源太郎が家督を相続することが許されました。源太郎は中小姓に取り立てられ、25石の禄を与えられ、児玉家の家名は再興されました。その後、源太郎は馬廻り役に任じられ、禄も100石に戻されています。

家名再興後、久子は子弟の教育と仏道に帰依し、報謝の生活を送りました。その功績が認められ、昭和3年（1928年）には八十六節婦として緑綬褒章を受章しました。これを記念して、周南市の児玉神社内に「兒玉久子褒章記念碑」が建てられています。

昭和12年（1937年）1月19日、久子は95歳でその生涯を閉じました。墓所は、山口県周南市の興元寺の墓地にある児玉家墓所です。

参考文献

徳山市役所『徳山市史史料 下』徳山市役所、1968年3月。
小川宣『周南風土記』文芸社、2006年8月。ISBN 978-4-28601-631-3。
* 小林道彦『ミネルヴァ日本評伝選「児玉源太郎」』ミネルヴァ書房、2012年2月。ISBN 978-4-62306-283-6。

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