全日本野球協会

全日本野球協会（BFJ）

一般財団法人全日本野球協会（Baseball Federation of Japan、略称：BFJ）は、日本におけるアマチュア野球の国内競技連盟として活動する組織です。この法人は、国際舞台における日本のアマチュア野球の代表として、日本オリンピック委員会（JOC）をはじめとする各種国際組織への加盟や、国際大会への選手派遣といった重要な役割を担っています。

BFJの設立は1990年に遡ります。当時、日本を代表するアマチュア野球組織として、国際オリンピック委員会（IOC）や国際野球連盟などの国際機関に加盟し、公式な窓口となる組織が必要とされていました。この要請に応える形で、国内のアマチュア野球を代表する二大組織であった日本野球連盟（社会人野球）と日本学生野球協会が共同で、BFJの前身となる「全日本アマチュア野球連盟」を創設しました。

複雑な歴史的変遷

日本の戦後のアマチュア野球界では、社会人野球と学生野球がそれぞれ独立した運営を行っていました。両者の連携が始まったのは、1954年にアジア野球選手権大会が開催されることを機に、国際試合での統一チーム編成や国際大会の国内開催に向けた組織の必要性が認識されてからです。この年に「日本アマチュア野球協会」が設立されました。

しかし、この協会をアマチュア野球界全体の統括組織とする動きに対し、学生野球側が反発。意見の対立から学生野球協会が脱退を表明し、1966年に同協会は解散に至りました。協会解散後も国際大会への出場は不可欠であり、両者が協力して統一チームを組む必要があったため、1967年により緩やかな連携を図るための「日本アマチュア野球国際委員会」が構成されました。この委員会は、それぞれの構成団体の付属機関として位置づけられました。

野球がロサンゼルスオリンピック（公開競技）やソウルオリンピック（公開競技）で実施されるにあたり、代表チーム派遣には国内競技団体が日本体育協会（現：日本スポーツ協会、体協）に加盟していることが求められました。当時、体協に加盟していたのは社会人野球側の組織のみでしたが、過去の経緯や、国際大会で勝利を目指すというアマチュア野球界全体の総意に基づき、国際委員会の枠組みのもとで統一チームが編成され、派遣されました。

「代表団体」としての発足

1992年のバルセロナオリンピックから野球が正式競技となったことで、こうした暫定的な措置を継続することが困難となりました。国際野球連盟やJOCへの加盟には、統一されたアマチュア野球組織が必要です。しかし、国際的な「一国一組織」の原則のもと、既に国際機関に加盟していた社会人野球の統括団体である日本野球連盟に対し、学生野球側がその傘下に入るか、あるいは統合するかの選択を迫られる状況となりました。

学生野球側は、これまでの経緯から社会人野球や体協の傘下に入ることを避けたいと考えていました。また、社会人野球の傘下に入ることで、日本学生野球憲章との整合性に問題が生じるのではないかという懸念を文部省（当時）が示したこともあり、両者間の交渉は難航しました。しかし、「勝てるチーム」を編成してオリンピックでのメダル獲得を目指すというアマチュア野球界全体の強い願いや世論の動きが後押しとなり、それぞれの組織の独立性を保ったまま、「上部団体」ではなく「代表団体」を構成するという方向で合意が形成されました。

こうして1990年6月20日、日本野球連盟と日本学生野球協会という二つの強力な組織によって構成されながらも、両連盟の「上部団体ではない」という、やや特殊な形態を持つ「全日本アマチュア野球連盟」が発足しました。この連盟は、JOCと国際野球連盟に加盟し、対外的に日本のアマチュア野球界を代表する役割を担うことになりました。なお、この複雑な組織構造の背景には、日本野球連盟は体協に加盟している一方、日本学生野球協会は体協にもJOCにも直接加盟していないという、それぞれの団体の思想や意識の違いが大きく影響しています。連盟自体はJOCには加盟しましたが、体協には加盟しませんでした。

全日本アマチュア野球連盟は、広義のアマチュア野球全体を包括するのではなく、設立の経緯から主に日本野球連盟と日本学生野球協会を対象とする組織でした。かつては、社会人野球と大学野球の年間王者を決める「全日本アマチュア野球王座決定戦」（1991年～1997年）も主催していましたが、運営上の理由から廃止されています。

全日本野球協会への改称と現在

2013年4月1日、全日本アマチュア野球連盟は一般財団法人へ移行するのに伴い、組織名を現在の「全日本野球協会」に改称しました。この移行と同時に、これまで独立していた全日本軟式野球連盟もBFJに加盟しました。組織体制も刷新され、選手強化やアンチ・ドーピングなどに関する委員会の設置、さらに独立組織であったアマチュア野球規則委員会を傘下に置くなどの変更が行われました。

現在、BFJは日本のアマチュア野球界を対外的に代表する組織として活動しています。また、2016年5月1日には、プロ野球を統括する日本野球機構（NPB）と合同で「日本野球協議会」を設立し、野球界全体の連携強化にも取り組んでいます。

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