全貌社

全貌社（ぜんぼうしゃ）とは

全貌社は、かつて存在した日本の出版社です。1952年に水島毅によって創設され、1999年に解散するまで、約半世紀にわたり活動しました。全貌社は、主に日本共産党や共産主義、科学的社会主義を批判する書籍や雑誌を出版し、戦後の日本の思想状況に大きな影響を与えました。

創設者：水島毅

全貌社の創設者である水島毅は、1915年12月20日に岡山県で生まれ、2009年5月11日に亡くなりました。彼は全貌社を設立し、自ら主筆として時事月刊誌『全貌』（後に『ゼンボウ』）を発刊しました。また、「思想運動研究所」の代表も務め、全貌社から出版される多くの書籍の編集にも関わりました。

主な活動と出版物

全貌社の活動は、その雑誌『全貌』と、思想運動研究所名義で刊行された書籍に集約されます。

『全貌』とその復刻
月刊誌『全貌』は、1952年に創刊され、1998年まで590号にわたり刊行されました。その後、1998年から1999年にかけて、世界日報社より復刻版（縮刷版）全8巻と総目次が刊行されました。この雑誌は、共産主義批判を軸に、様々な社会問題や政治問題を取り上げていました。
思想運動研究所編の書籍
全貌社は、思想運動研究所の名義で、多数の書籍を出版しました。これらの書籍は、日本共産党やその関連組織、いわゆる「進歩的文化人」を批判するものが多く、その中には以下のようなものがあります。
『新版 進歩的文化人 ―革命を扇る100人の指導者とその背景―』
『恐るべき民青 ―経営はこうして破壊される―』
『経営細胞 ―会社のなかの赤い砦―』
『恐るべき労音 ―50万仮装集団の内幕―』
『日本共産党本部 ―ここで何が行なわれているか―』
『左翼30集団 ―こうして日本は破壊される―』
『暴発する新左翼 ―決定版・革命集団の解剖―』
『大学はこうして破壊される ―アカハタ教授150人の群像―』
『恐るべき裁判 ―付表・左翼裁判官、弁護士、法学者一覧』
『安保風雲録 争乱十年の記録』
『人物戦後左翼文学運動史』
『労働組合の共産党員 ―経営を破壊する人脈―』
『大学教授紳士録・左翼篇 ―全国244大学・学部別総点検―』
『全国大学別左翼系教授総覧 ―全国264大学・学部別総点検―』
これらの書籍は、当時の社会情勢や政治状況を反映し、共産主義や左翼勢力に対する強い批判を展開していました。
水島毅名義の書籍
水島毅は、自身の名義でも多数の書籍を出版しました。これらの書籍は、日本共産党の内部事情や、宮本顕治をはじめとする共産党幹部を批判する内容が多く含まれています。
『共産党批判百問百話 ―この党を選んだ300万人への解答―』
『職業革命家 ―日共幹部160名の履歴書―』
『暴力の証言 ―かくされた代々木本部の真実―』
『宮本顕治の陰謀 ―密室のなかからの告発―』
『宮本顕治倒るる日 ―そのとき共産党に何が起こるか―』
『宮本共産党を裁く ―汚れた党史のはらわたを抉る!―』
その他の書籍
* 関貴星による『楽園の夢破れて―北朝鮮の真相』や『真っ二つの祖国―続・楽園の夢破れて』、室伏高信による『池田大作 どんな日本をつくろうとするのか』など、共産主義やその周辺の政治・社会問題を批判的に扱った書籍も出版されました。また、上杉千年、田辺敏雄など、特定のテーマを扱う著者による書籍も出版されました。

『進歩的文化人――学者先生戦前戦後言質集』

全貌社が出版した書籍の中でも特に有名なのが、『進歩的文化人――学者先生戦前戦後言質集』です。この書籍は、当初『学者先生戦前戦後言質集』として内外文化研究所編で刊行されましたが、後に『全貌』編集部編として改題・増補されました。この書籍は、清水幾太郎、長田新、中村哲ら、いわゆる「進歩的文化人」30数名の戦時中の言動を紹介し、その変節を批判したものです。しかし、この書籍は、実際には内閣調査室が手がけたものであったことが、後に執筆者であった元内閣調査室職員の志垣民郎によって明らかにされています。

平賀書簡問題と全貌社

長沼ナイキ事件に端を発した「平賀書簡問題」では、全貌社が発行した『恐るべき裁判』を最高裁判所事務総局総務局が公費で購入し、全国の裁判所に配布していたことが判明しました。この書籍は、青年法律家協会会員の判事を再任拒否する、いわゆる“ブルーパージ”に一役買っていたとされています。

全貌社の解散とその後

全貌社は1999年に解散しました。しかし、その出版物は、戦後の日本の思想状況を理解する上で重要な資料となっています。全貌社の活動は、反共主義の立場から、共産主義や左翼勢力に対する批判を展開し、その影響は現代にも及んでいます。

全貌社が残した書籍は、単なる批判書としてだけでなく、当時の社会や思想を映し出す鏡として、今もなお研究対象となっています。

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