進歩的文化人

進歩的文化人とは

「進歩的文化人」という言葉は、特定の思想的立場を持つ文化人を指す用語として用いられます。日本では、特にリベラリズム、進歩主義、社会主義、共産主義といった思想を支持する文化人を指すことが多いです。この言葉は、明確な定義があるわけではありませんが、一般的には、戦後の日本社会において、大きな影響力を持った知識人や文化人を指すことが多いです。

概要

保守主義の立場からは、「自由主義」や「良心的勢力」といった言葉と近い意味で使われることもあります。この場合、反進歩主義とみなされる論者まで含まれることがあります。

竹内洋によると、「進歩的文化人」は、進歩の先にソ連や中国のような社会主義国を想定し、日本社会党や日本共産党を支持する立場を取りました。彼らは、反自民党、保守派の立ち位置をとり、護憲平和、非武装中立、戦後民主主義の擁護などを主張しました。英語では、socialist intellectuals と訳されることがあり、1948年から1980年代にかけての論壇を独占しました。岩波茂雄亡き後の岩波書店や朝日新聞社を中心に、日本の社会に大きな影響を与えました。

しかし、戦時中もアカデミズムを守った岩波書店と、時局に迎合した朝日新聞社は別物であるという見方もあります。

保守派からの批判

「進歩的文化人」に対しては、当時から保守派による批判が寄せられました。代表的な人物として、福田恆存、西部邁、小室直樹などが挙げられます。福田は、戯曲「解ってたまるか!」を制作し、進歩的文化人を批判しました。

新左翼からの批判

保守派だけでなく、全共闘をはじめとする新左翼も進歩的文化人を激しく批判しました。進歩的文化人は、三里塚闘争などの住民運動に参加・支援しましたが、実際に闘争に参加していた地元住民からは、彼らが実力闘争の魅力に魅せられ、ただ「空港絶対反対」と言うだけで、闘争解決の仲介をしようとしなかったと批判されています。

元新左翼活動家の笠井潔は、PC（ポリティカル・コレクトネス）インテリの「いつも正義の側にいたいという自堕落な願望」が、若者の右傾化を招いたと批判しました。また、在日朝鮮人からは、彼らが「良心的日本人」をアピールするために在日を利用しているという批判もあります。

吉本隆明も、独自の立場から進歩的文化人を批判しました。

衰退

竹内洋は、進歩的文化人の衰退のきっかけは、「進歩的文化人の鬼子」である全共闘による批判であったとしています。竹内も進歩的文化人に批判的ですが、当時の進歩的文化人は大物大学教授や一流作家であり、全共闘に解体されたあとの「大衆的進歩的文化人」とは別格であったとしています。

まとめ

「進歩的文化人」は、戦後の日本社会において大きな影響力を持った一方で、多くの批判も受けてきました。彼らの思想や活動は、現代においても議論の的であり、その歴史的意義を多角的に捉えることが重要です。彼らの功績と過ちを理解することは、戦後日本の社会と文化を理解する上で、欠かせない要素となるでしょう。

参考文献

稲垣武『「悪魔祓い」の戦後史――進歩的文化人の言論と責任』文藝春秋、1994年8月。
稲垣武『「悪魔祓い」の戦後史――進歩的文化人の言論と責任』文藝春秋〈文春文庫〉、1997年8月。
「進歩的文化人」（臼井吉見・奥武則『あたりまえのこと』所収 1957年、新潮社）
奥武則『論壇の戦後史　1945-1970』平凡社〈平凡社新書〉、2007年5月。
思想運動研究所編編『1970年の進歩的文化人』全貌社、1968年。
全貌社『全貌』編集部編編『進歩的文化人――学者先生戦前戦後言質集』全貌社、1957年。
思想運動研究所編編『進歩的文化人』（新版）全貌社、1965年。
竹内洋『丸山眞男の時代――大学・知識人・ジャーナリズム』中央公論新社〈中公新書〉、2005年11月。
谷沢永一『悪魔の思想――「進歩的文化人」という名の国賊12人』クレスト社、1996年3月。
谷沢永一『反日的日本人の思想――国民を誤導した12人への告発状』PHP研究所〈PHP文庫〉、1999年10月。
谷沢永一『自虐史観もうやめたい！――反日的日本人への告発状』ワック〈WAC bunko〉、2005年6月。
森田実『進歩的文化人の研究――体験的戦後史レポート』サンケイ出版、1978年11月。

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