兪淵

兪淵（ゆ えん）は、元末から明初の激動期を生きた軍人です。生年は不詳ですが、1400年にその生涯を終えました。本貫は濠州とされ、兪廷玉の子としてこの世に生を受けました。

1355年、父の兪廷玉、そして兄である兪通海、兪通源らと共に、後に明朝を建国する朱元璋に帰順しました。この時、兪淵は父や兄たちの功績により、朱元璋の側近として仕えることになりました。舎人として、朱元璋の身近で様々な活動に携わりました。

その後、兪淵は数々の征討に従軍し、その功績を重ね、都督僉事という要職に任じられました。しかし、1390年、次兄の兪通源が胡惟庸の獄に連座するという事態が発生します。多くの者がこの事件に関与して処罰される中、兪淵は不問に付されました。これは、彼が朱元璋から厚い信頼を得ていたことの証左と言えるでしょう。

1392年、兪淵は越巂侯に封じられ、世襲が認められる世券を与えられました。さらに、軍を率いて建昌の反乱を鎮圧し、越巂に城を築くなど、その軍事的な才能を発揮しました。しかし、翌年、罪に問われて侯位を失い、郷里に帰されるという不遇を味わいました。それでも、彼の功績は忘れられることはなく、1399年には建文帝によって再び召し出され、失っていた爵位を取り戻しました。

1400年、明朝の歴史を大きく揺るがす靖難の変が勃発します。この戦いにおいて、兪淵は建文帝側の軍に参加し、燕王朱棣（後の永楽帝）軍と白溝河で激戦を繰り広げ、無念にも戦没しました。彼の死後、次男の兪靖が官位を継ぎました。

兪淵の生涯は、元末から明初にかけての動乱期を象徴するものであり、彼の軍人としての活躍、そしてその後の転落と復帰は、当時の社会情勢を色濃く反映しています。参考文献として『明史』巻133 列伝第21が挙げられます。

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