兪通海

兪通海（ゆ つうかい）：明建国を支えた水軍の雄

兪通海（1330年 - 1367年）は、元末の混乱期に台頭し、後の明王朝の創始者となる朱元璋に仕えた軍人です。字は碧泉といい、濠州を本貫とします。兄弟の兪通源、兪淵もまた朱元璋に仕え、明建国の功臣として名を連ねています。彼は、その卓越した水軍指揮能力と冷静沈着な判断力で、数々の戦いを勝利に導き、朱元璋の天下統一に大きく貢献しました。

勢力拡大への貢献

兪通海は、父の兪廷玉、弟たち、そして同志の趙普勝や廖永安らと共に、巣湖に水船1000艘を擁する勢力として割拠していました。1355年、朱元璋が長江を渡る作戦を計画した際、船を所有していなかった朱元璋に対し、兪通海は間道を通じて接触し、協力を申し出ました。この協力により、朱元璋は水軍を得て、采石や太平を攻略することに成功します。翌年、蛮子海牙が水軍を率いて采石を攻撃した際には、兪通海は廖永安と協力してこれを撃退、さらに進軍してきた陳兆先の軍勢も破り、3万6千の兵を降伏させるという大戦果を上げました。

1357年には、水軍を率いて石牌戍、望亭、新安を攻略し、呂珍の水上勢力を制圧するなど、連戦連勝の活躍を見せます。湯和に従って鎮江を攻略し、秦淮翼元帥に任じられると、丹陽、金壇、常州と立て続けに攻略し、その功績により枢密院判官に任じられました。

張士誠軍との激戦

敵対する張士誠軍との戦いでは、馬跡山で敵軍を破りますが、敵将の戦意が喪失する中、兪通海は徹底抗戦を主張します。右目に矢を受けながらも督戦を続け、その不屈の精神を示しました。1358年には廖永安と共に石牌を攻撃し、張士誠軍を降伏させ、さらに石牌を再び攻め落としています。

1359年には、樅陽の水寨を攻撃し、趙普勝の軍勢を破り、その水上勢力を接収、池州を支配下に置きました。この功績により枢密院事に任じられています。

鄱陽湖の戦いでの大活躍

1360年、陳友諒が龍湾に侵攻した際には、諸将と共に反撃し、敵水軍を慈湖で撃滅、7名の将を捕虜にするという勝利を収め、枢密院同知に進みました。その後も銅陵、九江を攻略しています。

1362年には、徐達に呼応して反乱を起こした祝宗と康泰を攻撃し、南昌を回復させました。その後も張士誠軍との戦闘を続け、廬州を攻略しました。

1363年、陳友諒が大軍を率いて南昌を攻略した際には、朱元璋による救援軍に参加します。両軍は康郎山で激突しましたが、陳友諒軍の巨大な船舶に対し、小型船を主体とする朱元璋軍は苦戦を強いられました。しかし、兪通海は風を利用し、火砲で敵船20余隻を焼き払い、戦況を打開します。また、朱元璋が窮地に陥った際には、常遇春と連携してこれを救出。さらに、兪通海の水軍は敵軍を抑え込み、廖永忠らが火薬を仕込んだ7隻の船を敵中に突入させ、敵船数百隻を焼き払うという大戦果を上げます。

兪通海は、鄱陽湖の戦いにおいて、敵船団深く侵入し、自ら陣頭指揮を執ることで、朱元璋軍の士気を高めました。彼は、鄱陽湖の水深が浅いことから敵船舶は旋回が困難であることを見抜き、上流に回り込み入り江への閉塞作戦を進言します。この作戦は成功し、陳友諒軍は脱走や寝返りが相次ぎ、最終的に陳友諒は戦死しました。兪通海は、この戦いにおける最大の功績者として、朱元璋から良田と金帛を賜っています。

その後

1364年、武昌を平定した後、朱元璋が呉王を自称すると、兪通海は中書省平章政事に任じられました。その後も通州に進軍して張士誠勢力を破り、朱瓊と陳勝を捕縛、江淮行中書省事に任じられ、廬州に駐屯しました。1366年には、徐達の下で安豊を平定、湖州や太倉を攻略しています。

しかし、1367年、姑蘇攻撃中に流れ矢に当たり重傷を負い、金陵に戻ります。見舞いに訪れた朱元璋に対して、言葉を発することもできず、38歳という若さで死去しました。朱元璋はその死を深く悲しみ、兪通海を豫国公に追封し、後に虢国公を贈封、忠烈と諡しました。また、功臣廟には彼の肖像が建てられ、その功績が永く称えられています。

人物像

兪通海は、冷静沈着な人物であり、軍律を厳しく守りながらも、将兵には恩徳を与え、その辛抱は厚かったとされています。特に水戦を得意とする巣湖の諸将の中でも、最も優れた水戦能力を持っていたと伝えられています。

参考文献

• - 『明史』巻1 本紀第1 太祖1
• - 『明史』巻133 列伝第21
• - 『国初群雄事略』巻4
• - 『国初群雄事略』巻7

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