八・一宣言

八・一宣言について

八・一宣言（はちいちせんげん）は、正式には「為抗日救国告全体同胞書（抗日救国の為に全同胞に告げる書）」と呼ばれ、1935年8月1日にモスクワにて、中国共産党と中華ソビエト共和国中央政府によって発表されました。この文書は、中国共産党が日本の侵略に対抗し、国民の団結と共同戦線を呼びかけるものであり、特に当時の蔣介石政府の方針を批判する内容を含んでいます。

背景

当時の中国は厳しい政治情勢に置かれていました。満洲事変を受けて日本軍は中国北部への侵攻を進め、更なる領土拡張を試みました。これに応じて、蔣介石は自国内の団結を図り、「攘外必先安内」の政策を掲げましたが、国内の問題に集中するあまり、日本の侵略対応が後手に回る事態を招いていました。

1933年には塘沽協定が締結されたものの、日本は華北五省へのさらなる圧力をかけ続け、国民党は戦況に専念せざるを得ない状況になりました。併せて、蔣介石の対共産党弾圧も進んでおり、これによって共産党とその指導者たちは、安全な拠点を求めて長征を余儀なくされました。そして、1935年には新たな本拠地として延安にたどり着きました。

コミンテルンの影響

国際的な環境においても、1935年7月に行われたコミンテルン第7回大会では、反ファシズムの統一戦線を組織する方針が打ち出され、中国においてもソビエト連邦の運動を拡大させる必要性が訴えられていました。この背景の中で、王明をはじめとする駐コミンテルン中国共産党代表団は、八・一宣言を発表する運びとなります。

八・一宣言の内容

八・一宣言は、蔣介石の政策に対する強い反発を表現し、中国全土の民衆や各政党、軍に対し、内戦を放棄し日本に立ち向かうよう求めるものでした。さらに、この声明と共に提出された抗日救国十大綱領においては、新たな国防政府の設立を要求し、その指導の下で中国共産党の軍が協同抗日闘争に当たることを明言しました。

宣言の発表は、中国の主要都市で広く受け入れられることとなり、世論は内戦をやめて日本に立ち向かう方向へと動き始めました。日本はその後、華北での分離政策を強化し、傀儡政権である冀東防共自治政府の設立に至ります。この状況に対抗する形で、1935年12月には学生運動が勃発し、民衆の反日感情が広がりました。

その後の影響

八・一宣言を受けた内外の情勢は、その後の西安事変や第二次国共合作につながる重要な流れを生み出しました。国共内部の党派対立が続いた時期にあっても、共通の敵である日本に対抗するために、様々な勢力が結集し始めたのです。この流れは、中国の歴史において、共産主義運動と国民党が共同戦線を敷く重要な転機となるものでした。

八・一宣言は、単なる歴史的事実にとどまらず、中国の抗日戦争の象徴として、後の世代においても大きな意味を持ち続けています。

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