八十島親徳

八十島親徳：渋沢栄一を支えた「一番番頭」

八十島親徳（やそじま ちかのり）は、明治から大正にかけて活躍した日本の実業家であり、渋沢栄一の秘書役として、その事業を献身的に支えた人物です。彼は、渋沢家において「一番番頭」と称されるほど、絶対的な信頼を得ていました。

生い立ちと初期の経歴

1873年（明治6年）4月9日、八十島親徳は愛媛県宇和島に生まれました。旧宇和島藩士の家に生まれ、愛媛県第三中学校、商業素修学校を経て、1894年（明治27年）に渋沢栄一が設立に関わった高等商業学校（現在の一橋大学）を卒業しました。卒業後すぐに、同郷の先輩であった穂積陳重の推薦により、渋沢家の家政・事業・資産などを管理する部署である元方に入り、渋沢栄一の秘書役を務めることになります。

渋沢栄一の秘書として

八十島は、渋沢栄一の秘書として、多岐にわたる業務をこなしました。1906年（明治35年）には、渋沢栄一の欧米視察に随行し、国際的な視野を広げました。その後、彼は渋沢家の理事に昇進し、渋沢財閥の経営において重要な役割を担うことになります。

高等商業学校申酉事件と澁澤倉庫

1908年（明治41年）に母校である高等商業学校で起こった申酉事件においては、調停に尽力し、事態の収拾に貢献しました。1909年（明治42年）には、渋沢栄一が営業主、栄一の次男である篤二が部長を務めていた澁澤倉庫部が株式会社に改組される際、専務取締役に就任しました。渋沢篤二取締役会長をサポートし、渋沢栄一の意向を汲みながら、会社経営を支えました。

澁澤同族株式会社と晩年

1916年（大正5年）には、渋沢家の資産管理会社として澁澤同族株式会社が設立され、八十島は専務取締役に就任しました。彼は、渋沢栄一の嫡孫である渋沢敬三を社長として支え、渋沢家に関わる様々な実務を取り仕切りました。また、渋沢栄一が関わった各種事業会社の取締役や監査役を務める傍ら、竜門社の幹事や母校の如水会常務理事にも就任するなど、多方面で活躍しました。

1920年（大正9年）3月18日、八十島親徳は生涯を閉じました。

家族

八十島親徳は、西村勝三の娘であるとくと結婚しました。三男の八十島親義は、第一銀行の常務や澁澤倉庫の社長、会長などを歴任し、渋沢青淵記念財団竜門社の理事長も務めました。また、澁澤倉庫社長在任時には、第一銀行と日本勧業銀行の合併を仲介するという功績も残しています。六男の八十島信之助は法医学者として札幌医科大学名誉教授となり、七男の八十島義之助は土木工学者として東京大学名誉教授となりました。三女の文子は、阪谷芳郎の次男であり、渋沢栄一の孫にあたる阪谷俊作に嫁いでいます。弟の八十島樹次郎は堀越商会東京本店代表者を務めました。

参考文献

渋沢青淵記念財団竜門社（編）『渋沢栄一伝記資料』、渋沢青淵記念財団竜門社、1969年5月
澁澤倉庫百年史編纂員会（編）『澁澤倉庫百年史』、澁澤倉庫、1999年3月

関連人物

渋沢栄一
渋沢敬三
阪谷俊作
穂積陳重
阪谷芳郎
白石喜太郎

八十島親徳は、渋沢栄一の事業を支え、渋沢財閥の発展に大きく貢献した功労者として、その名が歴史に刻まれています。

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