八尋信夫

八尋信夫:競艇界を沸かせた「博多天皇」



八尋信夫(やひろ のぶお)は、1943年2月生まれ、福岡県出身の元競艇選手です。福岡大学卒業後、23期生として競艇選手の世界に飛び込みました。同期には、同じく競艇選手である服部幸男の父、服部正彦がいます。

「博多ん大将」「博多天皇」の誕生


地元福岡での圧倒的な強さから、八尋は「博多ん大将」「博多天皇」と呼ばれるようになりました。その実力は、周年記念競走で1974年に初優勝を飾ると、1977年1978年には史上初の連覇を達成するという偉業を成し遂げました。この記録は、1993年に同じ福岡の占部彰二が達成するまで、10年以上も八尋のみが保持していました。

SG制覇とアウト戦法の開眼


1977年1979年には、地元福岡で開催された全日本選手権競走で連続優出。1979年には、北原友次や安岐真人といった強豪を抑え、自身唯一となる四大特別競走・SG級レースを制覇しました。この時、2着には岡本義則が入り、地元勢によるワンツーフィニッシュで、「博多天皇」の名を世に知らしめました。大卒のSGレーサーは、前年に住之江の全日本選手権を制した松田慎司(広島大卒)以来2年連続2例目であり、八尋を最後に現れていません。

1975年、八尋は戦法をアウト一本に転換し、話題となりました。これは、野中和夫のアウトからの三冠王達成に刺激を受けたのではなく、同じ九州出身の長崎の国光秀雄が、アウトから軽々と勝利を重ねる姿を見て、「面白いように勝ちよる」と感じたのがきっかけでした。それまではインコースに固執し、叩かれてもインを譲らなかった八尋でしたが、第2回笹川賞競走(常滑)での成績不振を機に、アウト一本に戦略を切り替えました。

伝説となった転覆事故


1975年8月には、第21回モーターボート記念競走(下関)で、初日の4着を除いて優勝戦まで5連勝。優勝戦では、本命のインコースにいた野中に対し、アウトから全速でまくりを仕掛けました。バックストレッチでの勝負を目指しましたが、海面のうねりにハンドルを取られ転覆。野中もエンストし、両者共倒れに終わりました。その後、福岡ダービーでは4号艇4コースから勝利を収めたものの、SG制覇後は、「博多ん大将」「博多天皇」の称号は松田雅文へと受け継がれていきました。

その他の主な実績と引退


八尋は、1980年の唐津と1983年の若松で開催された九州地区選手権競走も制覇しています。しかし、九州ダービーは福岡では一度も制覇することができませんでした。1999年9月19日の児島一般「テレボートカップ」では、5号艇4コースから新井敏司らを抜き、最後の優勝を飾りました。2000年3月3日の尼崎一般「日本財団会長杯争奪ダイスポカップ2000」が最後の優出(6号艇2コース進入で5着)となり、同年6月16日の若松一般「第28回しぶき杯争奪戦競走」4日目9R予選が最後の勝利、同19日の最終日3R一般が最後の出走となりました。

獲得タイトル


1974年 - 福岡開設21周年記念競走
1977年 - 福岡開設24周年記念競走
1978年 - 福岡開設25周年記念競走
1979年 - 第26回全日本選手権競走(福岡)
1980年 - 九州地区選手権競走(唐津)
1983年 - 九州地区選手権競走(若松)

八尋信夫は、その独特のスタイルと地元での圧倒的な強さで、競艇ファンに長く記憶される名選手です。

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