八王子宿

八王子宿の歴史

八王子宿は、甲州街道の宿場町であり、八王子十五宿、または八王子横山十五宿とも呼ばれ、現在の東京都八王子市の市街地の起源となりました。この地には、飯盛旅籠が置かれ、戦後までその賑わいが続きました。

戦国時代から江戸時代初期

1590年、後北条氏が豊臣秀吉と対立し、八王子城は上杉景勝・前田利家らの北陸勢の攻撃を受けて落城しました。その後、小田原城も降伏し、北条氏照が兄の北条氏政とともに敗戦の責任をとり切腹すると、この地は徳川家康に与えられました。家康は、江戸を守る軍事拠点として八王子を重視し、武田家遺臣からなる八王子千人同心を配置しました。

家康は、八王子に支城を築く代わりに、八王子城を廃城とし、八王子を直轄領としました。関東各地の直轄領を管理する代官18人が駐在し、大久保長安が代官頭としてこの地の開発を担当しました。大久保長安は甲州街道を整備し、1593年には旧八王子城下から浅川南岸の街道沿いに新たな八王子町を建設し、住民を移住させました。

江戸時代の発展

徳川氏による開発の結果、1650年代までに現在の八王子中心市街には、甲州街道沿いに大きな宿場町が形成されました。この宿場町は、十王堂宿、横山宿、八日市宿、本宿、八幡宿、八木宿、子安宿、馬乗宿、小門宿、本郷宿、上野宿、横町、寺町、久保宿、嶋坊宿からなる「八王子十五宿」として知られるようになりました。八日市、横山、八幡などの地名は、滝山城、八王子城の城下町から受け継がれてきました。

八王子十五宿は、横山宿と八日市宿を中心に栄え、4と8の付く日に市が開かれました。4の付く日は横山宿、8の付く日は八日市宿で市が立ち、絹織物などの特産品が売買されました。八日市という地名はこの市場に由来しています。この市場の発展が、後の八王子中心市街へと繋がっていきました。

1704年、八王子宿への代官の駐在は廃止され、代官は江戸に移住しましたが、八王子宿は幕府直轄の天領として維持されました。また、周辺の村には旗本や小大名の所領も多く、一元的な支配は行われませんでした。治安維持は、八王子千人同心が担いました。宿場町は、何度か大火に見舞われた記録も残っています。

八王子宿には、伝馬制度が敷かれ、人や荷物の輸送を担いました。前後の宿場町は、日野宿と駒木野で、駒木野には小仏関所が設けられました。

幕末から明治時代へ

1867年、上田修理らによる甲府城攻略計画が発覚し、八王子千人同心によって鎮圧されました。翌年の戊辰戦争では、八王子宿は戦火を免れました。江戸時代中期以降、絹の生産が奨励され、明治時代には絹の道（神奈川往還）の終着宿場として栄えました。

八王子宿は、その歴史を通じて、軍事、交通、商業の要所として重要な役割を果たし、現代の八王子市の発展に大きな影響を与えました。

参考文献

吉岡孝『八王子千人同心』同成社、ISBN 4-88621-261-1
馬場 憲一「法政史学 31巻」、法政大学史学会、1979年

関連項目

日野宿
小仏関所
八王子城
滝山城
八王子千人同心
八王子市の歴史
* 絹の道（神奈川往還）

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