滝山城

滝山城：戦国時代の要塞、その歴史と遺構

滝山城は、現在の東京都八王子市丹木町に位置し、戦国時代に築かれた日本の城です。現在は「滝山城址公園」として整備され、訪れる人々にその歴史を伝えています。この城は、多摩川と秋川の合流点に位置する加住丘陵の複雑な地形を巧みに利用した天然の要塞であり、かつては関東でも有数の規模を誇ったと言われています。

滝山城の歴史

築城時期については諸説ありますが、有力なのは1521年（永正18年・大永元年）に山内上杉氏の重臣である大石定重、定久によって高月城から移って築城されたという説です。その後、1546年（天文15年）に北条氏康が河越の夜戦で扇谷上杉氏を滅ぼすと、大石定久は北条氏康の三男・氏照を娘婿に迎え、北条氏の傘下に入りました。1558年（永禄元年）頃には、北条氏照によって城の大改修が実施されました。

しかし、1561年（永禄4年）には、上杉輝虎（後の上杉謙信）が小田原城を攻めた際に滝山城下を経由したにもかかわらず合戦が起こらなかったことなどから、当時滝山城はまだ存在していなかったとする説も存在します。この説によれば、滝山城は1563年（永禄6年）から1567年（永禄10年）の間に、上杉謙信の南下に対抗するために築城されたとされています。

滝山合戦

滝山城をめぐっては、いくつかの合戦が記録されています。

天文2年の滝山合戦（1533年）: 北条氏綱が鶴岡八幡宮造営の費用拠出を拒否した大石氏を攻めたとする説がありますが、永禄年間築城説を採ると、この時期にはまだ滝山城が存在しないため、別の城を攻めたか、あるいは後世の創作である可能性も指摘されています。
天文21年の滝山合戦（1552年）: 長尾景虎（後の上杉謙信）方と後北条氏方が滝山城方面で交戦したとされますが、この年の長尾軍の南下は上野国内に止まっており、西武蔵方面での実際の戦闘があったかは不明です。
永禄12年の滝山合戦（1569年）: 武田信玄率いる約2万人の軍勢が小田原攻撃に向かう際、滝山城の北側の拝島に陣を敷き、別働隊が小仏峠から侵入しました。北条氏方は廿里で迎撃しましたが敗れ、滝山城は三の丸まで攻め込まれました。この戦いを機に、滝山城の防御体制の不備が認識され、後に八王子城を築城し移転するきっかけになったとも言われています。

滝山合戦以降

天正15年（1587年）頃、氏照が八王子城に本拠を移すまでの間、滝山城は政庁として使用されていました。1590年（天正18年）の豊臣秀吉による小田原征伐の際には、滝山城は北条氏照の管轄する城の一つとして記録されています。

現代の滝山城

1951年（昭和26年）6月9日、滝山城跡は国の史跡に指定されました。2017年（平成29年）には、日本城郭協会により「続日本100名城」（123番）に選定され、2020年（令和2年）には、日本遺産「霊気満山　高尾山　～人々の祈りが紡ぐ桑都物語～」の構成要素として関連史跡に認定されました。

現在、滝山城址公園には、本丸、中の丸、空堀、竪堀、虎口、曲輪、土橋、土塁などの遺構が残っており、中世城郭の傑作として評価されています。公園内は桜の名所としても知られていますが、未だに私有地も多く、公園化されていない部分も存在します。

城下町の移転「三宿三転」

現在の八王子市の中心部にあるJR八王子駅北口周辺の八幡町、横山町、八日町は、もともと滝山城の城下町として始まり、八王子城を経て、大久保長安によって現在の地に移されました。この経緯は「三宿三転」と呼ばれています。八王子織物の起源も、滝山城下の市で取引された頃に遡ると言われています。

構造の特徴

滝山城は、伝二の丸の集中防衛を意識して作られており、二の丸の周囲には馬出状の曲輪が配置されています。これらの遺構は、敵の侵入を阻むために高度な防御システムを構築しており、その構造は後の山中城や八王子城にも影響を与えたと言われています。

発掘調査と整備

滝山城では、伝千畳敷、伝中の丸、伝本丸の曳橋の大堀切、伝本丸の枡形状の虎口などで発掘調査が行われています。調査の結果、多摩川から採石された河原石を使った石畳や暗渠、三方を土塁で囲まれた虎口の構造などが明らかになりました。遺構の保全については、東京都とNPO法人の有志団体によって少しずつ整備が進められています。

アクセス

京王八王子駅・JR八王子駅北口から西東京バス「戸吹（ひよどり山トンネル経由）」行きで約20分、「滝山城址下」下車徒歩5分
* 拝島駅から西東京バス工学院大学行きまたは純心女子学園行き乗車約15分、「滝山城址下」下車

滝山城は、その歴史的価値と遺構の美しさから、多くの人々を魅了し続けています。訪れる際には、ぜひその壮大なスケールと自然の美しさを体感してみてください。

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